またのご乗車を お待ちしております!

『ブラボー! スーパーブラボー!』
 ――友人がバトルサブウェイにて、念願のサブウェイマスター・ノボリさんにまでたどり着き、やっとのことで勝利したという。その時のバトルビデオの映像を観せてもらいながら、私はいつの間にか立ち上がっていた。
 そうだ、厳選しよう。
 ポケモン可愛さにバトルを避けてきた私が、人が変わったかのようにバトルへと情熱を注ぎ込むようになった。対策と戦術を練り、ポケモンを育て、バトルをしない日はなかった。豹変ぶりに驚きながらも協力してくれる友人のおかげで、私は連勝をゆっくりと、着実に重ねていくことが出来た。
 ――そして、ついに。その時はやってきた。たたん、たたん、小刻みに揺れる電車の振動にも慣れてきて、今ではそれが心地いい。高速で移動し続ける四角い箱の中で、私は、ノボリさんと対峙していた。どちらかが負けるまで止まらない。
「本日は、ご乗車ありがとうございます」
 気づけば私と私のポケモンは満身創痍で、それでもようやっと、立っていた。無我夢中で、必死で、途切れ途切れの記憶しか残っていない。ただ、最後の最後、私達が仕掛けた攻撃が、偶然にも急所に当たった――それがトドメとなったことだけは、確かだった。
 敗北したはずのノボリさんとポケモン達はしゃんとしていて、微笑みすらたたえていた。
 勝っ、た? 本当に?
 ノボリさんが拍手をしてくれた。あの日バトルビデオで観たそのままの台詞を、ノボリさんが言う。
「ブラボー! スーパーブラボー! あなた様のような素晴らしいポケモントレーナーに対して、全力を出せたこと。非常にうれしく思います!」
 それだ。
 私はそれが、聞きたかった。
「ノボリさん!!」
 急に声を張り上げる私に、ノボリさんは少しだけ驚いたようだった。拍手をやめ、興味深そうに首を傾げた。
「はい、なにか?」
 私はずっと――ずっと言いたかったことを言った。
 言いたくて言いたくて、そして、そのためだけに、ここにいた。
「スーパーブラボーって、なん! です!! か!!!」
 叫ぶように問うた。スーパーはイッシュの言葉だったけれど、ブラボーは違う。私はそのことが、そのことだけが、ずっと気になっていたのだった。
 するとノボリさんは見たことのない、穏やかな顔で笑った。
「――世界は、繋がっているということでございます」
 目眩がした。
「ノボリさんかっこいいい!!」


「という訳で恋に落ちてきた」
 もう本当にノボリさんかっこよすぎる最高だいすき愛してるとまくし立てる私を、友人はごみを見るような目で見ていた。失礼な。ダストダスに謝れ。