初夏
……つう、つつう。そんな風に流れていく感触は存外に気色が悪い。そうか、そうか、人の身とは、こうやって、汗は背骨を伝い、肌を這い、衣服を湿らせてゆくものか。
「……何を笑ってるんだい、全くもう」
なんとなく理由はわかっていた。
「だって、みつただ、」
すごい顔だよ。
そう審神者が汗だくで笑うので、つられて笑うしかなかった。そんなに、しかめっ面をしてただろうか。
「格好つかないなあ」
目が潰れる程の太陽の光に、手のひらを透かすと、自分に倣うようにして、青空に手のひらが二つ、並ぶ。赤い。嗚呼、夏というものは。夏というものは、こういうものなのか。
ゆらゆらと遠くの空気がざわめく。日向と日影のべつ世界。木々の緑の色深さ。しろい、しいろい、大きな雲。それから、繋いだ手と手の、熱さ。
「いつでも、格好いいよ」
そうかい?
そうだよ。
そう審神者が笑うので。つられて、汗だくで笑うしか、なかった。
生きている、ということを、ひしひしと、感じた。生かされていた。熱をもち、汗をかき、自然と眉間に皺がよる、夏。物に命を吹き込んだなら。物が命を感じるのなら。熱をもち、汗をかきながら――
「僕、折れるなら夏がいい」
「やめてよね」
いつかいつかの話だよ。