#好きな鶴丸を呟いてTLを鶴丸にする

《いいかい、きみ。よく聞くんだ。万が一の話をしよう。なあに、そんなに怖い顔をしなくていい。きみには俺が――はいはい、わかってるさ、俺たち、だな。俺たちがいる。それだけは忘れてくれるなよ。》
「あっ――」
「おい、しっかりしろ!!」
「……大丈夫だから! 走って!!」
「掴まれ!!」
 足がもつれて転んでしまった、膝が燃えるように熱い、きっと血だらけだ、けれどすぐ立ち上がって走り出す。走れ走れ走れ! 躊躇ってる暇はない、走れ!
 全身がちぎれそうに痛い、上手く息が出来ない。それでも薄暗闇の中、初期刀の金の髪が導いてくれる、手を引いてくれる。そして胸元に抱いた彼の人が、足を前に前にと出させてくれる。
《まだ、たった六振りの本丸だ。それも“五振りもしくは一振り”とあっちゃ、もしもの話はどれだけ用意があってもいい。……こらきみ、謝るんじゃない。きみも俺たちも、確かに弱い。つまり、これから強くなれるってことだろう?》
「っへへ、喧嘩はこうじゃねぇとな! 本丸内敵短刀、全撃破だっ!」
「おなじく! てきのうちがたな、すべてたおしました! 中傷いちです!」
「戦ってるんだ、これくらいは普通さ。索敵続行! 他遡行軍の気配は無いよ!!」
「主さんっ、概ね予定通りです!! 兄弟、頼んだよ!!」
《折角短刀二振り、脇差し二振りと揃ってるんだ、まずは屋内戦と洒落こもう。おっと、夜にするのも忘れるなよ。本丸はきみの領域だ、使えるものは全部使わないとな。打刀一振りは、やはりきみの護衛が相応しい。が、それだけじゃ勿体ないか。誘い込めなかった分を倒しながら、あちらさんの大将を引き付けるくらい出来るだろ。な、初期刀殿。》
「――俺を写しと侮ったことを、後悔させてやる!」
 血の匂いと剣戟の音が届く、それほどに近い、怖い、怖い、どうしようもなく足がふるえて、泣きたくて、唇を噛み締めた。泣かない。逃げ出すわけにはいかない。一緒に戦うと、決めたから。
《きみの霊力は、六振り目に耐えられなかった。太刀の一振りで、他の五振りが刀に戻る。……弱ったな、謝らなくていいって言ってるだろう。逆に俺は感謝してるくらいだぜ。トリを飾らせてくれるんだろう?
 ああ、そうさ! きみに、驚きの結果をもたらそう!》
「……主!!」
 それが合図だった。拮抗した鍔迫り合いから、敵の大太刀がいよいよ押し通そうとした瞬間。
 ずっと腕の中にあった――太刀・鶴丸国永を、空に投げた。
《大舞台は晴れがいい。》
 ここは本丸。
 審神者わたしの領域。
《なんせ俺は鳥目だからな。ひとつ、お天道様を頼むぜ?》
「景趣変更――“夏の庭”!」
 瞬く間もなく炎天が目を刺す。
 次いで打刀ががらんと横たわる。急に支えを失った大太刀は重心を崩し、地に伏した。
「予想外だったか?」
 陽光に、白装束がとける。
「ガラ空きだぜ!」
 太陽を背に鶴が舞った。
 血飛沫。
 太い首がごろんと落ちて、血の雨がぼたぼたと降ってきたけれど、もう、怖くなかった。
 快晴の青と白に、紅をさす。
「……めでたいだろう?」


 戦闘結果。
 中傷一。
「はいはーい、皆手入れ部屋に集合!」
「だぁ~、づかれた~。飯にしようぜ飯に!」
 時間遡行軍全撃破。
 本日の誉――脇差・にっかり青江。
「こ……こいつは驚いた……」
「んっふふふ。笑いなよ、にっかりとね」
 審神者練度上昇。
 六振り顕現可。
「ようやくぜんいんそろいましたねぇ」
「……ふん。どうせ、これからもっと煩くなるんだろう?」
「……うん!!」
 ――勝利A!