>焼いて骨にして酒で飲む
からっ風がびゅうびゅうと煩い夕暮れだった。さむいねえ、と話しかける。マスク越しのちいさな声だったけど、彼女がきちんと聞いてくれてることが、ぼくにはわかった。いつだってそう。どんな時でも、彼女は耳を傾けてくれた。
住宅地のど真ん中に、ぽっかりと出来たこの空き地は、かつて誰かの家があった場所だった。家主が死んで、取り壊されて、それからずうっと、そのまんま。粗大ごみが勝手に投げ捨てられていて、山になっていて、ごちゃごちゃしていて、そして、ぼくらがいつも落ち合う場所でもあった。
あっためてあげよっか。
うん、と、頷く気配がした。
ぼくは、泥だらけの手でマッチを擦った。だってこんなに風がつよい日だから、穴でも掘らなきゃ、集めた落ち葉も飛んでいってしまうでしょ。
灯油はしっかりかけたけど、それだけじゃあ、なんだかさむそうだったから。
消えないように手のひらで守りながら、そっと火種を落とした。
ごおっと一瞬火柱が立って、前髪が少しだけ焦げる。
「笑わないでよ」
火加減なんてわからないし。しっかり燃えてくれないと、きみだって、困るでしょ。
くすくすと笑い声が聞こえる。不思議とかなしくはなかった。ぱちぱちと時々爆ぜる火が、熱い。泣いたって、すぐ乾いちゃうくらいには。
日が落ちる頃にはきっと、しろい、しいろい骨だけが、穴の中に残るだろう。
ねえ、今夜は熱燗にしようね。
きみとぼくとで、一緒に飲もう。