ごはんを食べないあなたへ

「おぉ~じゃまっしまあーーす、あーあーわりーね両手ふさがってっからさあ、頭でぴんぽん押しちゃったよ今~!! 笑えるよなあ~~!! はいはいお邪魔しますよ~~っと。机の上のそれ邪魔~~全部どけて~~はあ~~いどうも~~。え? これ? 見てわかんない? カレーだけど。隣の突撃晩ごは~~ん!! まあ突撃してんの俺だけど~~!! うちカレーのっこんねえからさあ、いやそりゃそうでしょ、野郎六人もいんのに"今日はカレーよニートたち~~"なんて言われた日にゃあ戦争よ戦争。まー俺が勝つけど!
 んだからね、このカレー、超貴重。ありがたあ~く食えよ~? って米炊けてないじゃーん!? 馬鹿なの?! おっサトウのごはんあんじゃーん? 玄関開けたらサトウのごはーん玄関開けたらサトウのごはーん!」

 どろり、カレーが盛られていく。盛り方は彼の名前の通りオソマツで、皿の縁にカレーが飛んでいたり。深皿に、白いごはん。煮崩れて、ぐずぐずになったじゃがいも。申し訳なさ程度に彩りを添えるにんじん。たまねぎはすっかりとけている。それから、ささやかにお肉。ほこほこ湯気を立てるそれは、どこからどう見ても、ご家庭のカレー。
「とりあえず全部、カレー食ってから考えね?」
 赤いパーカーの腕が、躊躇いもなく、カレーの小鍋越しに伸びてくる。その裾で、ごしごしと乱暴に目元を拭われる。痛いと文句を言っても、
「美味いよお? うちのカレー」
 にいっと、笑われた。