こんなところまで来てしまったと、ふと過ぎる。ほんとうに、時々。たとえばバイト先に向かう途中、何気なく夕日を眺めながら。あるいは、がやがやと煩い雑踏の信号待ちで。そしてこんな風に、二人分の食器を片しているときにでも。
水につけてあった皿はスポンジで撫でればすぐ汚れが落ちる。軽くすすいで隣に渡す。渡したものは手際よく拭かれていく。食器は、朝ごはんの分と、昼の弁当箱と、夕ごはんの分と。それでも別に二人がかりで共だって、やらなくてもいい量だ。
けれどこうして肩を並べて、狭い台所に立つことは、あえて言うなら習性だった。双子として身についた習性。さっきから水音に混じって妹の鼻歌が聞こえる。知っているフレーズだったので、口ずさんでやれば、ちらりと横目で笑われた。互いに上機嫌なことがすぐわかる。すぐ知れる。そういう距離で生きている。
こんなところまで来てしまった。
「はいこれでおしまいです」
「はいどうも、おつかれさまでした」
きれいになった流し台で軽く手を洗って、シンク下の扉の取っ手にかけてあるタオルで拭く。
たったそれだけの動作が終わるのも、妹は当然のように待っている。お茶にしましょうかと声をかければ、ぱっと笑顔が花咲いた。
いつもいつでも望んでいるそれは、いつもいつでも眩しくって仕方ない。小さな頃から、変わらない。
「大きくなりましたねえ」
「なんですか、いきなり」
初恋を抱いたまま、ずいぶん遠くまで来てしまったものだ。
兄様お爺ちゃんみたい、とくすくす喉がふるえてる。
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