なにかの儀式みたい、
声には出せなかった。
姿見の中で、きちんと同じ高さの肩が並んでいる。
入学式を目前に控えた、
桜のつぼみが芽吹く頃。
最初は冗談半分に、きゃっきゃと笑い合っていた。
けれど今は部屋は静か、
鏡をじっと睨んでいる。
真新しい制服はぴんと糊がきいていてかた苦しい。
兄は妹のセーラー服を、
妹は兄の黒い学ランを。
儀式だとしたら、これは何のための、誰のための――
……夜は明けていない。寝たまま、布団の中で体ごと横に向く。隣ではまだ、兄が寝ていた。薄暗く、顔は見えない。
微妙な間隔を空けて並んだ、もう一組の布団。いまだに兄と寝ていると言ったら、おそらく、驚く人の方が多いだろう。身に染み付いた習慣。それを言い訳に、こうして幸せを噛み締める。
ぼんやりと夢を想った。昔の夢。あのあと、みるみるうちに背は離されて、身体つきは似ても似つかぬものになった。よく間違えられた二人の声は、尖った喉仏に阻まれた。手のひらを合わせて、届かない指先に驚いた。
泣いたっけ。
目を瞑る。少しずつ、少しずつ、二人がまるで違う生き物になってしまう日々が、成長が、怖かった。
双子なのに。
目を開ける。暗闇でも、凝らせば、その輪郭がわかる。世界でいちばん、慣れ親しんだものだから。
込み上げる想いに唇を噛んだ。
人には決して言えない恋をしている。
双子の兄に恋をしている。
喉は焼かれて潰れているから、告げる術はなくていい。
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