教授の都合で珍しく木曜日にゼミ飲みが行われ、明日も学校があるからと、早めにお開きになったのは幸いだったが、バイトがない日だったこともあり、結局最後まで参加する羽目になって、ようやく家まで帰ってきたところ、酔っ払った妹に絡まれている。長い。今時ラノベでもこんなに長いタイトルはない。おそらくは。
 何故こうなったのか。問いかけたとしても、もとよりこの家には行儀よく足を揃えて尻尾を振っているぽちくんと、じいとこちらを訝しげに見つめてくるタマと、ごきげんに笑い続ける可愛い妹しかいない。
 その全人口は自分も座っているソファの上に集中していた。なかなかの人口密度だ。右隣にぽちくん。左隣にタマ、
「……そろそろ降りませんか?いいかげん着替えてもう休む準備をしましょう?」
 そして真ん中、妹は私の膝の上に鎮座している。
(注・この場合の鎮座とは、どっかりと場所を占めていることの意、ではなく、神霊がある場所にしずまりとどまっていることの意、である方が正しい。言わずもがな神霊に等しい。)
「はあい」
 さっきからずっとこの調子で、返事きちんとはするものの、ますます腕に力を込めてくる。密着しているせいで表情は見えなかったが、この私にわからないわけがない。赤らんだ頬と、少し潤んだ瞳で、ふにゃけた笑顔を浮かべているに違いない。可愛い。辛い。
「なんでこんなに酔っちゃったんですか?そこまで飲んでなかったでしょう?」
「んー……」
 眠そうに呻きながらタマがよくするそれのように、頭がすりつけられる。可愛い。死ぬ。
「あ、そう言えばいつもよりペース早かったんじゃないですか?だめですよ?もっと気をつけないと、強くないんですから」
 すると緩慢な動きではあったが、ようやく体が離された。少し開いた距離にほっとため息をついたのも束の間、「ごめんなさい」と至近距離で眉が八の字に寄せられるのを見た。可愛い。死んだ。
「バイトがない日でしょ……?だから、いつもよりいっしょに飲めるのが、うれしくて……」
 ここが天国だ。

「……寝ましたか」
 何度か頭を撫でて背を叩いていくうち、安らかな寝息が聞こえてきた。起こさないよう細心の注意を払い、そのまま抱きかかえて立ち上がった。
 もちろん妹が絡んできた時点でそうすることだってできたが決して甘えてくる妹の可愛さを堪能していたわけでは大いにあったがそれはそれとして。可愛い。辛い。寝室に運ぶ途中に足までぎゅっと抱きついてきてトドメまで刺される。決まった!妹のだいしゅきホールド!効果はばつぐんだ!
 どこにとは言わない。
 片手で妹を支えたまま布団を敷いてそっと優しく寝かせてやって音もなく寝室の戸を閉めた。
 ――そうだ、写経をしよう――。
 長い夜になりそうだった。