貴方は双子の兄妹で『恋して愛して、憎んでる』をお題にして140文字SSを書いてください。
長く共に在ると、言いたいことも言えないことも言わないことも、すぐ伝わってしまう気がした。瞳の色から。時には指の先から。ささいな仕草で。だから沈黙さえ一つの答えだった。隠し事のない、仲の良い双子の兄妹。そうだったら。ほんとうにそうだったら。こんなにもくるしくなくていいんでしょうね。
お元気ですか。こちらは変わりないです。そんな風に始まるいつもの手紙。季節の挨拶と、当たり障りのない世間話。紙面に綴られた「私」の平坦さに呆れてしまう。それでいいとも思っていた。可もなく不可もなく、届けばいい。以上も以下も、ないのだから。兄と妹というものには。想いなんて乗せない。
貴方は双子の兄妹で『宛先のない手紙』をお題にして140文字SSを書いてください。
「最初さ、別人かと思った」「あ?ああ」目線を辿れば合点がいく。仲睦まじい双子がいるだけ。となれば興味は失われ、言葉は只の相槌となる。「声も態度も俺らと対するのじゃマジ別人じゃん」「同じ言動されてぇの?」「きめぇ!」「だろ」結論を出せば一瞬だけ、本田の目がこっちを鋭く睨んだ。怖い。
貴方は双子の兄妹で『砂糖菓子のように甘く』をお題にして140文字SSを書いてください。
「……また背、伸びました?」「ええ、まあ……もう少し欲しいところです」どこかぎこちない会話はここ暫く続いていて心苦しい。隣に立ってももう肩が触れあうことがない、すこうし見上げなければ目が合うこともない、言葉にならない感情が内臓で渦巻いている。だってそんな尖った喉仏は、私にはない。
「ど、どうかしました?」一息つける昼休み。さっきから口数少なくじっとねめつける私に、兄様がたじろいだ。何でもありませんと言えたらどんなにいいか。さっきまで一緒にいた友人に向かって、「兄様」と呼びかけてしまったなんて。「決して見間違えたわけじゃないんです……」ただ口が滑っただけで!
貴方は双子の兄妹で『隣の人』をお題にして140文字SSを書いてください。
軒先の下からそっと伸ばせば、いくつも雫が掌を打つ。「どうされました?傘がないんですか、お嬢さん」雨と一緒に降ってきたのは、そんな聞き馴染んだ声。「えぇ、突然降りだしたので」「入って行きますか?」気取った仕草が楽しくて、見れば二人とも笑ってる。「貴方様さえ良ければ、入れて下さいな」
そうだった。そう、過去系になったのはいつからだろう。互いを映す鏡だと、信じて疑わなかった幼い“一人”はもうどこにもいない。今ではくっきりわかってしまう。心は二つ。体も二つ。それでも、通い合う一瞬がうれしい。たとえそれが、半額シールの貼られた鯖を前にした、「味噌煮」という言葉でも。
貴方は双子の兄妹で『一心同体』をお題にして140文字SSを書いてください。
部屋にいればいつも触れられる距離で、思い出したように撫でたり、抱き合ったり、腕を絡めたり、キスをしたり。もちろん知ってる。知られてる。「お前はたとえ話がすきだなあ」笑いながら、そんな風に彼の人が笑う。繰り返す毎日がしあわせだから、そんなことが言えるなんて、もちろん知ってるよ。
貴方は飼い主とペットで『たとえばの話』をお題にして140文字SSを書いてください。
何回目だよその台詞。ため息と共に吐き出してみても隣の飲んだくれの耳には届きもしない。生徒と少し喧嘩したくらいで毎回朝まで酒盛りなんてこっちの身にもなれってんだ。安酒を呷れば伏せていた顔がいつの間にか見つめてきて鬱陶しい。「アート!!お前とは一生友達だかんな!!」台詞まで鬱陶しい!
貴方は先生と生徒で『僕は一生、恋をしない。』をお題にして140文字SSを書いてください。
あいらぶゆーと呟いてまぶたにキスをする。英語の発音なんてわかんない。なのに良くできました、と嬉しそう。彼は私にとっても甘すぎる。お返しにとばかりにまぶたと頬と唇にキスされて、「俺はもう死んでもいいな」なんて。まったく古風でキザで呆れるほど格好よくて、どうしようもないほど愛してる。
不意に黙るしかなかった。ぽろりと口からこぼれそうで、唇を軽く噛み締めた。それから隣を歩く片割れの、服の裾を引っ張って。何ですか、と言いたげな瞳に右手を差し出した。左手はすぐ繋いでくれた。だって、見上げてみたら、あんまり綺麗だったから。あなたの隣じゃ、うかつに月さえ愛でられない。
目がさめてから眠りにおちるまで。端的に言えば、そう。一緒にいてもいなくても、たとえ触れることができなくたって、いつも隣に感じていた。いつも隣に、感じている。――眠りにおちてから、目がさめるまで?そんなのは、わかりきった答え。「でしょう?」線香をあげる。煙がくゆる。あなたはいる。