夏と宴の終わり際

 額に受けた口付けの意味を問うことがわたしには出来なかった。

 南から吹く夜の潮風は、決して弱くはない。折角セットした髪を乱暴に撫ぜていく。一瞬だけ目を瞑る、頬の熱が早く引きますようにと祈った。
 照明が絞られているデッキは、ほとんど真っ暗だったけれど、きらびやかなパーティ会場の灯りを背景にして、こんなにも近くに――視線と手を繋ぐ先に――いるのだから。そして、妹の一挙一動を、いつでも見ているような人なのだから。気取られないはずが、なかった。
 この、みっともなく赤面した自分を。
 でも、繋いでない片手に、二人して持つグラスがそれにちょうどいい。
「……おや、酔ってしまいましたか?」
 ――こんな具合に。
(ああ、ずるいなあ)
 歩く度にパーティの喧騒が近付く。何度か瞬けば、光がにじむ。少しだけぼやけた視界が晴れる。
「そうみたい、です」
 仕方ないですね、と言いたげに(実際ほとんど言ってるような顔で)笑われて。
 お水をもらいましょう、お前はお酒が弱いですね、はいすみません、いえ兄様と比べたら誰だって、そろそろ部屋に戻ってもいい頃合いですかねぇ、まあ誰と飲み比べしても負ける気はしません、なんて。
 他愛ない言葉ならぽんぽんと、テンポよく飛び交う。そうして賑やかな場に戻れば、仲睦まじい――ように見えてたらとてもうれしい――双子の兄妹は、たちまち人ごみに紛れるだろう。
「兄様」
 だからその前に、言う。
 ほとんどデッキの入口、もとい出口に差し掛かった双子の兄は、ぴたりと足を止めて振り向いた。
「……楽しかったですね」
 言えたことは、そんなこと。
「……私もです」
 言われたことは、そんなこと。
 それでも、やっぱり、胸が騒いだようにうるさくて。嬉しくて。
 繋いだ手に力を込めて、
「わっ?!こ、こら!」
「行きましょ!」
 それだけじゃ足りないから腕に抱きついて。

 最後の夜のパーティが終わる。