といれ、いきたい。
そう自覚してしまえば、もう眠っちゃいらんない。体を半分起こして、ボクは口に手もあてないで、豪快にあくびをひとつ噛み殺した。ふわあ。ねっっむい。
「……ねえ、といれいきたい……」
いつもみたいに小声でお願いして、肩をゆすった。ああやだやだ、夜のトイレはほんとやだ。こわいもん。
寝る前ものすごく喉が渇いてて、がぶがぶ飲んでしまったのは覚えてる。それは確かにボクが悪いし、言い訳するわけじゃないんだけど、でも、夜中わざわざ起き出してトイレに行かなきゃいけない、みたいなルールがボクにあるわけじゃない。頻尿でもないよもちろん。つまり、すきで行ってるわけじゃないってこと。だって生理現象だし仕方ないじゃん?
それをどうにもまだわかってくれてないんだ、このチョロ松兄さんは。
いつだって面倒そうにするし、いい加減一人で行けるようになれよって毎回小言を挟んでくる。そんなのボクだってわかってる。でもさ、可愛い弟の可愛い頼みだよ、それくらい、聞いてくれてもいいじゃんね?
「ねえって……ねえ……、トイレ行きたい……ついてきてよ〜……、……お願いってば!」
少しずつ声が大きくなって、肩をゆする力も強くなる。
だってこれ、絶対起きてる。わざとガン無視だよ、憎たらしいったらありゃしない。
こんなに頼み込んでるのに本当酷いよ、いつもならすぐ、起きて、くれ、る…………のに…………。
うん?
いや、うん。
うん!?
……やあ! ボクは松野家末弟松野トド松!!
松野家六兄弟の寝る順番、唱和!!
一松兄さん!
カラ松兄さん!
ボク!
おそ松兄さん!
チョロ松兄さん!
十四松兄さん!
――以上!!
ボクは安心安定安全の真ん中。
じゃあこの、この、両隣に挟まれてもいない、ただ隣にだけあるぬくもりは、
「…………っ、くっ、ぶふっ……」
あああああああ!!!!!!!
「わかっ、わかった、ふふ、お姉ちゃんが、ついてって、あげっ、ひーー!! あははは!! ちょ、ええーー!? あはははは!!」
ああああああああああ!!!!
真夜中にの爆笑が響く、そうだよ、隣にいるのは、誰でもない、ましてやシコ松でもなんでもない、ボクの!! ボクの!! 可愛い!! 彼女さん!!
初めこそ無視を決め込んでいたみたいだけど(うわボクの彼女さんすんごい優しい!!)耐え切れなかったみたいで、ああああああ!!! ああああ!!!
恥ずかしい、恥ずかしい、今すぐ消えたい恥ずかしい。あの吹き溜まりみたいな家と彼女さん家を間違えたとかふざけてるの? このお泊りって何度目だっけ? 別に初めてじゃないんだけど? どうしてボクはこんな失態をおかすんだ?
眠気は当然吹き飛んでいた。おまけにピロートークで「無理させちゃって、ごめんね。朝までゆっくりおやすみ、いい夢を」なーーんて格好つけたのを思い出した。
起こしてんのボクじゃん!!!!!
「はあーー笑った……じゃ行こっか?」
枕に顔を埋めてじたばたしていたボクは、一瞬で布団の中から飛び出した。彼女さん家はベッドだったから、そこからおりたら自然と見上げる形になるけれど、今のボクにはそれじゃあ全然足りなかった!
「あんなのと!! 間違えて!! ほんっっっとーーーーにごめん!!」
土下座を決め込むボクに、はまたお腹をかかえて爆笑した。
し、死にてえーーーーーー!!!
今すぐ死にてえーーーーーーーー!!!
「し、死なないで〜〜(笑)」
「あああああ!!! ああああああ!!!(土下座のままちぢこまる)」