第一話 異世界のダッチ〇イフを購入してしまった

 俺の名前は向田剛志。27歳、ちなみに独身だ。
 異世界に勇者召喚されてチート能力でモテまくりありとあらゆる美女や美少女でハーレムを作ったったぜ!! ……という風にはならなかった、巻き込まれ召喚人生の真っ最中だ。
 召喚特典としてついていた固有スキルは『ネットスーパー』。俺がよく利用してたエオンのサイトがそのまま使える、かなり便利なスキルだった。(勇者の3人には笑われたけど)
 現に食うものには困ってないし、品質が保証された日本企業様様の商品を卸して、利益も得られている。詰め替え作業、大変だったけどね。パウチとかボトルとかこの世界に無いもんな。
 そして俺はこのスキルのせいかなんなのか、従魔がいる。フェンリルのフェルと、スライムのスイだ。ネーミングセンスは突っ込まないでほしい。散々言われてるし。……わかりやすくてよくない?
 俺の作った生姜焼きに釣られて飯目当てでほぼ無理やり従魔契約を結ばせてくる伝説の魔獣ってやっぱりちょっとアホだよねぇ。怖いから本人には言いません。まあ、スライムはなんでも食うって聞いたからネットスーパーで出たゴミ食べさせてたらいつの間にか従魔になってた、ってのもなんかマヌケな話だけどさ。俺の癒しはスイちゃんだけだよ。すっかり戦闘狂になっちまったけど。嬉々として魔物に酸弾浴びせまくるけど。
 なんていうかこう、俺の従魔ってぬるっと増える法則でもあるわけ? まさかこれ以上増えるってことはないだろうけどな。
【注・増えます】

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 カレーリナの街を出発する直前、俺は唐突に話しかけられた。
「よォ、景気はどうだい」
「……ええまあ、ぼちぼちですよ」
「ずばりアンタ、アイテムボックス持ちだろう?」
 ……なんだ、この男? 急に人のスキルに言及してこないでほしい。誰が聞いてるかわからないし。
 口調は荒っぽいが、見たところ身なりは小綺麗だ。軽装で、冒険者っぽくはないな。
「ハハ、そう警戒しなさんな。覚えちゃいないだろうが、この間ランベルトの旦那の店ですれ違ったのさ。旦那があんまり嬉しそうにしてるから、つい聞いちまった。そしたら、一世一代の大仕事を引き受けたって言うからよ」
 ああ、ランベルトさんの知り合いなのか? ちょっとほっとしたわ。全然知らん人間にスキルに関して声掛けられるのは怖いって。
 ランベルトさんには良くして貰ってるし、失礼のないようにしないとな。
「あのフェンリルを従魔にした冒険者がワイバーンを討伐したって話題で持ち切りだからな。ちょうど頃合、今ソイツを渡されたんだろうってピンと来たってわけよ。すれ違ったアンタはほとんど手ぶらとくりゃあ、自ずとスキルもわかるってもんよ」
 あんまりバレたくないけど、そりゃ手荷物もなけりゃ推察も出来ちゃうか。
「これは参りました、その通りです。よく見ていらっしゃるんですね。あの、出来ればご内密にして頂けると……」
「ああ。アイテムボックス持ちをあの手この手で自分専属の荷物持ちにしようとする人間なんざゴロゴロいるからな。フェンリルが従魔じゃ誰も手の出しようもないだろうが」
 あーはいはい、やっぱりそういう可能性もあるよね。異世界怖い。
 周りを見てみると、ちょうど人通りの少ない所で声をかけてきたみたいだな。なるほど、わかっていらっしゃる。
「それで、アイテムボックス持ちのアンタに商売の話をしに来たってわけよ。というか、旅をする冒険者相手じゃ、アイテムボックス持ちの人間にしか売れねえんだ」
 おっと、そう来たか。聞けばその商品は一部の男性に需要がべらぼうにあり、街中にお得意さんがいるらしい。
 でもそれって、わざわざ俺に声をかける必要ないんじゃないか?
「ハハ、アンタの懐が確実にあたたかいってわかってるからな」
 それ、本人を前にして言う?
 もしかして俺、カモられそうになってない?
「アンタに買って欲しいのはコイツだ」
 そう言えばずっと肩に背負ってましたね、デカい麻袋。そこから取り出されたのは……巨大玉ねぎ?
「もちろんただのオネオンじゃねえよ。こいつはな……」
 男はそこで声をひそめ、人の往来がないことを確認しつつ麻袋からもう一つ取り出した。
 …………きっ、気になるっ。いや欲しいっ、正直、ものすごく欲しいぞ!!

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

『あるじーまだ出発しないのー?』
『んーごめんなーもうちょっといい子で待てるか?』
『うん、スイいい子だから待てるよー』
『よしよし、じゃあフェルおじちゃんと一緒に遊んでようなー』
『おい、お主にその呼び方は許可しておらんぞ!』
 人がいる手前念話で会話して、早々に興味を無くして寝そべるフェルおじちゃん、もといフェルの背中にスイを放つ。
『もふもふー』
 俺には……俺にはどうしても、スイを鞄に入れたままこの話をする気にはなれなかったんだ……。
「そ、そ、それで?」
 ……どもってしまった。うう、悪かったな興味津々でっ。いやでも、健康な独身男性なら興味津々になるだろ!!
 セダムさん(名乗ってくれた)はニヤリと笑い、自信満々だ。
「育つまで時間はかかるが、仕上がりは保証するぜ」
「これ、本当に植物なんですか……?」
 なんとなくフェルとスイに見えないように立つ位置を調整してしまう。ま、まあ少し距離取ったから大丈夫だろ。場所も少し暗がりの裏路地に移動した。ちょっとその、見られるとアレなので。
 セダムさんが取り出した球根は、形は玉ねぎそっくりだ。
 皮はほとんど緑で、先っちょだけ少し紫がかってる。
 大きさはなんと小玉スイカくらいある。デカい。
 そしてもう一つは、なんというか、なんというかっていうか。
 直球で言うとそう、オ〇ホだ。オナ〇ール。アダルトグッズ。大人の玩具。
 ………………うん、何度見てもそれにしか見えない。
 そっくり。
 ヤバい。
 持たせてもらうとやや固さはあるものの、グニグニと弾力がある。色が薄緑のところさえ除けば、普通に日本あっちのアダルトショップで売ってそうだ。
 ……昔、息巻いて色々検索したこともあるけど、結局踏ん切りがつかずに買わなかったんだよな。まさか異世界で実物を手にする機会があるとは思わなかったよ。
 いや、実物じゃなくて植物性だけど。
 こっちの世界でもこの手の物ってあるんだなあ。
「こいつぁアルラウネモドキって言ってな、魔物じゃなくて正真正銘の植物だ。女陰モドキとも、単にモドキとも言う」
 アルラウネってあれだろ、諸説あるけど有名なのは人を誘惑して精気を搾り取るっていう、女性型で植物系の魔物だ。モドキがこんな形してるんじゃ、この世界のアルラウネもそんな感じらしいな。
「久々に上物が収穫出来たもんでよ、折角なら噂のアンタにと思ってな」
 今見せてもらっているモドキは卵より一回り小さい球根から育てたもので、の部分がどう生るかは完全にランダムらしい。
 どうっていうのはつまり、女性のどこの部分か、ってことなんだけど……ものによっては胸だったりお尻だったりするわけだ。いざ生えてる姿を想像するとちょっとグロい。
 そもそも女性の身体の一部分にそっくり成長する植物って何なの? って話になっちゃうんだけどさ。
 詳しく聞いてみると、元々はアルラウネだった種子や花粉が、何らかの要因で他の植物と交じり合って生まれた説が有力だって話だ。自然交配ってやつか。
「実際、女そっくりに生る物もあるんだぜ」
 マジか。
 セダムさん曰く、球根の大きさがそのままモドキの大きさになるらしい。大きければ大きい程、はどんどん女性に近づくみたいだ。
「この大きさなら、まず確実に『等身大』になるだろうな。アルラウネ寄りに育ったモドキはアッチの具合も相当に良く仕上がるんだぜ」
 ゴクリ……。
が生るまでちぃと時間はかかるが、旅してれば半年なんてすぐだろ。育て方も簡単なもんさ、そんなに水をやらなくても土を被せて放っとけば勝手に育つんで、アイテムボックスに入れっぱなしにしときゃいいのさ。普通なら金貨17枚はくだらない代物だが、押し売りの迷惑料ってことで……そうさな、金貨10枚でどうだい?」
 た、高い……。
 いや高いでしょ。確かに魔物を大量に買取してもらったり、ミスリル鉱山発見したり、フェルとスイがワイバーン討伐したり、石鹸やシャンプーの転売とか、しばらく生活資金には困りそうにないとは言え、大人の玩具に金貨10枚は流石に高すぎる。
 しかもそれって要するに、自分で育てるダッチワ〇フってことだろ?
 そんな我に返ったら虚しくなるお高い買い物なんてしない方がいいに決まってる。
「毎度ありィ!」
 決まってるんだけどなあ!
 俺は俺の欲望に負けました。
 ガックリ。
 ん? そういえばアイテムボックスに入れときゃ勝手に育つ、って言ったか?
 し、しまったー!! 俺のアイテムボックスって入れたら時間経過しないんだった!!
 つまり、定期的に取り出して世話しなくちゃなんないのか……。
 育てないって選択肢が出てこないあたり、俺も正直者だよな。
 ちくしょう。

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