「絶対似合うと思うんですよいや似合わないわけがないですよね私の妹ですからね当然ですねありがとうございます世界」
 だいたい兄様が早口になる時はこんな時。ノンブレスでよく言い切れるなあと毎度感心する。鍛え方が違うんですね、さすが兄様。でも世界に感謝するのはどうかと思う。
 開いて見せられているのは某アニメ雑誌。特集ページには書き下ろしのイラストと、アニメの設定資料が掲載されていた。小物や背面図の詳細までわかる、ファンには嬉しい情報がいっぱい!
 つまり着ましょうと迫られている。
 正確にはこの衣装を作りますので着てくださいその際には写真を撮らせてくださいよろしくお願いしますと迫られている。
 こういうことはよくある。そういう兄故に。
「資料あるとほんっとありがたいですよねーキャプチャだけじゃ心配でしたしこれで納得のいくものが作れます!」
「よかったですねえ」
 きらきらと目が輝いてうきうきと声が弾んで心もぴょんぴょんしてるであろう兄様は単純に可愛い、兄様が嬉しいなら私も嬉しい。
「でも着ませんからね?」
 だけどそれとこれとは別問題。
「…………?」
 そんな心底不思議そうに首を傾げられても。
 何もコスプレをすることが嫌なわけではない、兄様の作る衣装はクオリティが高いので、業者さんで買うよりよっぽど安心してお任せすることが出来る。
 もう一度特集ページに目を通してみると、何度見ても可愛らしいアニメキャラがこちらに向かって微笑んでいる、背中にランドセルを背負って。背中に……ランドセルを……背負って……。
「絶対お前に似合うのに……?」
 兄様には本気で私が幼女に見えているんじゃないかしら!
 そう、何もコスプレをすることが嫌なわけではなくて、こう、なんというか、極端に子供扱いされることに、多少なりとも憤りを感じても、罪ではないと思うのだ。
「……ちなみに、どっちですか?」
 小学生なヒロインの隣には、やや頭身が高めになった変身後の姿も載っている。腰の大きなリボンが可愛らしい。まだこっちと言われた方が、素直にうんと頷きやすい。
「え、どっちもですけど」
 頷きやすいのに!
 兄様はきりっとした良い顔で、力強く頷いてくれた。どっちもかあ〜!
 質問したことにより乗り気だと受け取られたのか、また兄様の目がきらきらと光る、わくわくした顔でこっちを見ている、うう、つらい、心が揺れる。だいすきな兄の望みとあれば、出来うる限りならなんだって応えたい、そのためなら背中に……ランドセルを……背負って……?
 その時私に電流が走る。
「絶対似合うんですよね?」
「絶対似合います!!」
「私に似合うなら兄様にも似合いますよね!?」
 だって双子ですもの!!
 ここぞとばかりにきりっとした良い顔で、力強く言い切った。兄様ははっとして、すぐに言わんとすることがわかったのか、やっぱり目をきらきらさせて、笑顔がまぶしいったらありゃしない。
「変身前後合わせ」
「変身前後合わせ」
 一字一句同時に言うと、自然と握手が交わされた。こういうことはよくある、そういう双子故に。
 変身前は兄様がやってくださいね!

Oct.10Oct.12