横顔だけうかがうのはとてもむずかしい。それがほんの少し、わずかな時間であっても、すぐ目があってしまう、すぐすぐ気取られてしまう。ほんとにちょっとしか見てないのに、今だってほら。
 きっと私のことなんて、なんでもわかっているんだろうな、と思う。わかられていると思う。どうしてって、妹のことをわかっていない兄様なんて、この世界にいないもの。
 目があっても、照れたりはしない。当たり前のことだから。双子として、兄妹として、ふたりの間のこととして。なんですか、と聞いてくるのは、いつも兄の方からで。じゃあそれはそのまま、こちらが見つめている回数が、多いことになるかしら。
 三度ほど瞬きをして、なんでもないですと言って、目を伏せる先に、写し途中のノートと、シャーペン、自分の手。そこににょっきり、違う手が伸びてくる。
“もう少しですよ”
 書き添えられた綺麗な文字と、デフォルメ調のらくがきがかわいい。終わったら、ようやっとお昼だ。朝から勉強だなんて、随分学生らしいことをしたものだ。昨日スーパーで買った二人分の食材が、小さな備え付けの冷蔵庫に入れてあって、昨日から楽しみで仕方ない。
 ぱっと顔を上げれば、やっぱり目があって。さあちゃんと写しなさいとばかりに笑ってる。
 すきだなあ。
 言わない代わり、返事の代わりに、文字とらくがきにちょっとだけ書き足した。隣で笑いを噛み殺す気配がする、してやったり。素知らぬ顔で続きを書き写す。
 思ってしまう。双子として、兄妹として、ふたりの間のこととして。どんなに当たり前のことだとしても。立ち止まるように、気づかされるように、普通のことのように、噛み締めるように、あなたがすきだと、思ってしまう。笑顔ひとつで、すとんと胸に落ちてくる。
 きっと、そんな私のことなんて。
 なんでもわかっているんだろうな。
 だからこうやって、許されていることを、許されていると知って、許されている中から、伝えていく。
 だって、ハートマークを書き足すくらい、“可愛い妹”のやることだものね。

Oct.12Oct.14