chapter:大木大樹

〈year 2020〉


 あれから、どれくらい時間が経ったかな。わかんないや。千空ならわかるんだろうな。うわすき。すきだなあ。
 うーん、こんなことになるなら、もっと言っておけばよかった。朝はおはようと一緒に言ってたし、お昼休みとか放課後とか、会う度に言ってたけど、やっぱり足りなかったな。



 大きく旋回し、自由に空を翔ける姿は希望そのものだった。心が震え、涙が滲んで、喉から雄叫びを上げていた。きっと何千回、何万回駄目だったとしても、諦めることはなかっただろう。諦めるわけがない。絶対に助けると、クスノキの下で誓いを立てたあの日から。
 俺が石化から復活して一年、やっと、ここまでたどり着いた。
 一人目を、助ける権利。ブドウの手柄だと言われたが、千空のことだ。もしかして、初めからそのつもりだったんじゃないか。さすがの俺にもそれくらいは、わかるぞ! 有難く受け取って、心から感謝する。
 一人目は、もちろん決まっている。
 だが。――だが。
「本当に、いいのか?」
「ああ゙? ここにいねーヤツのことどーーーやって助けんだこの雑頭」
「む! た、確かに!!」
 大空を羽ばたく小さな影に、やはり、千空も思いを馳せていたのか。鳥のような子だった。ぱたぱたと駆け回り、お喋りずきで、よく笑った。
 俺は、はっきり言って鈍い。言われた通りの雑頭である。人の言葉を鵜呑みにし過ぎるとよく言われた。疑うのは苦手だ。しかし、信じるのは得意だ。信じている。ファンタジーに科学で勝つと、千空が言うのなら。
 ただ信じて、己が出来うる限りの全てを、やるだけ。
「……いーんだよ、どーせそのうちもれなく全人類助けんだからよ」
「ああ……そうだな!!」
 信じている。
 きっと、あの子も生きている。



〈year 2021〉


 あの日、お姉ちゃんは告白されたのかな? 大樹さんは告白出来たのかな? ガッツポーズまでして送り出したのに。今は二人が無事なことを祈るしかない。
 そういえば二人の前では、千空にすきって言ってないから、お姉ちゃんと大樹さんはたぶん、わたしが千空のことをすきだって知らない。はず。
 だって大樹さんがお姉ちゃんにすきって言えてないのに、わたしが何回も何十回も千空にすきって言ってるなんて、ちょっと、言えないでしょ。TPOは弁えてます。