chapter:小川杠
〈year 2022〉
わたしが知り合う頃にはもう、大樹さんはお姉ちゃんがすきだった。なんなら初めましての時に気が付いた。だってわっっかりやすいんだもの。そしてお目が高い!
杠お姉ちゃんは、いい女です。そして大樹さんも、いい男です。いい女を長年見てるとね、わかるんですよそういうの。わたしの見る目は確かです。応援する他ないよね。
窪地に溜まった天然の温泉は、少し熱いくらいのお湯加減。かけ流しのお湯の中で体をぐうっと伸ばすと、気持ちがよかった。自分でも、不思議なほど落ち着いている。何千年も経ってしまった実感は、はっきりと胸にある。ぼろぼろになって、欠けてしまった大仏様が目に浮かぶ。でも、もう、同じ理由では泣かないだろう。お父さん、お母さん、みんな。心の中で、呼びかける。待っててね。そのためにも、出来ることを全力でやろう。大樹くんと千空くん、二人を見てると、頑張ろうと思えた。世界だって、戻せる。絶対。
3700年前の続きを聞けなかったのは、ちょっぴり残念だったけど――らしいなあって、思っちゃったから。
「大樹さんから、呼び出し? そっかそっかー、ふぅーん、へぇー、大樹さんから呼び出しかぁー」
「……なんだいよう、その目は?」
「ううん、べっつにぃ」
「なんでガッツポーズ!?」
あの日、意味ありげにほくそ笑んだあの子が懐かしい。一つ年下の女の子。小さい頃からのご近所さん。名字が同じだったこともあって、まるでほんとの姉妹のように、一緒だった。
近くには石像がなかったと、千空くんが教えてくれた。きっと生きてる、大丈夫だ、そう大樹くんは力強く励ましてくれた。二人にも、よく懐いていたあの子。
私の、幼馴染。
「いってらっしゃい、お姉ちゃん」
「うん、行ってくるね」
必ず、おかえりとただいまを言うからね。
〈year 2024〉
すぐさま勘づいたわたしは、二人がいない間に答え合わせだってした。
見りゃわかんだろ。
そう興味なさげに解答してくれたのが千空だった。それから、お節介焼かねーのか恋愛脳、って笑われて。
もちろん、そのつもり――は、微塵もなかった。無理にくっつけようとか、なんとかしようとか、全然思わなかった。