chapter:コハク

〈year 2027〉


 元気が良すぎて声が大きくて名前みたいに真っ直ぐで、年下のわたしにもしっかり挨拶してくれて。
 こんな風に、外野が余計なちょっかいかけないよう、目を光らせてくる友達だっている。
 既に安心と信頼しかない大樹さんが、どうやってお姉ちゃんにアプローチしていくのか?
 そんなの、あたたかく見守っていきたいに決まってた!


 
 夜の帳は平等だ。全ての者に訪れる。だが昔はこの闇さえねじ伏せていたと言うのだから、全く科学という力は恐ろしい。
 ひとたび太陽が昇れば、どれだけ身骨を砕いても構わなかった。どんなに働いても苦ではない。姉者を治すためであれば、この体はいくらでも動くし、動けるのだ。
 だから千空から話を聞くのは、作業が出来ない夜間の就寝前に限られた。クロムは科学のことばかり聞きたがるが、過去の世界の話はめっぽう面白い。営みが、生活様式がまるで違う。
 とくに、学校とやらの話は興味深かった。子供たちが集い、学ぶ場所らしい。そもそも巨大な建造物の中にいくつも部屋がある時点で驚きであるが、なんと一つの部屋には村の総数ほどの子供が一堂に会するというのだ! なんとも想像にし難い。
 今はあの長髪男、もとい司の元にいる、大樹と杠の名も多く出た。今も昔も、共にいたのだろう。大切な者たちだとわかる。
 何やかんやと皮肉めいた言い回しをする千空だったが、私はそこいらの人間より夜目がきく。確かめるには月あかりで充分だった。
 彼彼女らを語る時の双眸は、いつもよりずっと柔らかい。
「……ふむ、君の良い人か?」
「ちげーよ馬鹿」
 先の二人と同じ頻度で出る名前に問えば、そう言われたが。
 おお、なんだ千空、君もそんな風に笑えたのだな。



〈year 2039〉


 邪魔なんて絶対しません! むしろ二人の邪魔するやつがいたらぶっ飛ばしてやる!
 早口でまくし立てたら、あーあーうるせえピーチクパーチク鳥かよテメー、なんて悪態つかれたっけ。今でも思い出せる、その時の千空の顔。
 ちょっとだけ、笑ってて。
 なんだか、楽しそうだった。