chapter:クロム

〈year 2039〉


 ねーねー千空さん、千空って呼んでいい?
 あ゙? 好きにしろよ、どうせたった数ヶ月ばかしの差だ、そもそも年齢で敬称変えるとか意味ねーしな。
 あはは、社会に出てから苦労しそうなタイプ!
 ククク、人のこと言えんのかテメー? 初っ端先輩にタメ口でよ。
 全然そゆこと気にしない人に言われてもなぁ。ねー千空!
 んだよ今度は。
 わたし、千空がすき!
 ……は?


 
 硝酸ってやつと、アルコールてやつを、きっちり30対70で混ぜる。硝酸は、濾して余計なものを取り除かないとダメ。アルコールは酒に入ってるらしいが、温めて強く濃くする蒸留って作業を挟まないとダメ。しかも、少しでもズレたら反応しなくなるらしい。
 ややこしくて面倒で、だからこそ面白え。
 妖術は、科学だった。千空が来てから、胸のワクワクが止まらない日々の連続だ。
 復活液の作り方を聞いたあと、浮かんだ疑問をすぐにぶつけた。じゃあなんで、千空は石化からとけたんだ? 全員石化してるならよ、そんなややこいレシピ、偶然にも出来るはずがねえ。
 千空曰く。天然の硝酸を垂れ流す洞窟が、石化した千空の近くにあったこと。石化したままだった千空の髪の毛は、硝酸で元に戻ったこと。他の人間に硝酸をかけても、反応しなかったこと。そして3700年の間、意識を飛ばさなかった千空と――友達の大樹だけが、硝酸で復活したこと。
「あのデカブツは俺より半年もかかったけどな」
「おぅ、じゃあつまり! 他の石化してる奴でもよ、今でも考え続けてりゃあ硝酸で復活するってことか!?」
「硝酸さえかければな。……あ゙ー、今思えばあそこで運使い切ってんだ、俺は」
 た、確かに。その洞窟のとこまで千空の石像が流されてなきゃ、復活してなかったんだもんな。ヤベー!
 もちろん、そればっかに頼ってもいられないことはわかってる。でも昔から言うだろ?
 運も実力のうち、ってよ。



〈year 2041〉


 ――あれが、いちばん最初だったっけ。
 笑った顔を見て、あ、すきだな、って思った。お姉ちゃんの友達ってだけで、初めからすっかりすきだったけど。
 わたしの見る目は確かなので。
 すぐさま「余りもん同士仲良くしましょうってか? 神経疑われてえのか?」とかめっっちゃくちゃ嫌そうに言われたけどね。