chapter:あさぎりゲン
〈year 2045〉
わたしは、千空に恋をした。恋をして、それだけだった。
そのうち千空も、そういうものだと理解してくれたみたいだった。
何回も、何回も、繰り返し。
すきだなって思った時に、すきだなって言う。ただ、それだけ。
〈year 2057〉
相手が千空だから、安心して、何回でも伝えられた。千空は、否定しない。
千空は、わたしの好意を、そのまま置いといてくれる。そんなところも、すき。
復活液の材料が、この洞窟で取れると聞かされていた。最重要施設として、普段は見張りも立ててるんだって。
今は、メンタリストの仕事を邪魔しないように、と俺以外出払ったところ。でもすぐに戻ってくるらしい。さっさと仕事しろってことね。と言っても、どういった人物かは、既に知ったばかりだった。木に刻まれた日付を見たから。
西暦5738年4月1日。
これを、石化からとけた時に書ける人間。
あの獅子王司がその手で殺めたと言いながら、なおも警戒し、自分に捜し出せと依頼させる程の男。
ジーマーでバイヤーすぎるでしょ。
生きてたらお目にかかりたいかもね、千空ちゃん。
洞窟前にはもう、痕跡は残っていない。見晴らしを良くするためにか、少し開墾されてるし。土を被ったまま、無造作に置かれている石像は、おそらくその時に掘り起こされたんだろう。復活を、優先されていない人々。俺、司ちゃんに顔と名前知られててよかったな~。ごめんねぇ。
形だけ謝って頭を下げたら、あれ、ちょっと濡れてる? たぶん、司ちゃんたちが洞窟から汲んでいった液体。復活液の材料。傍らに連れていた男は見るからに粗忽そうだったし、俺持ちますよ司さん、とか言ってぱしゃり。予想がつきすぎてつまんない。
つつう、と石像の腕から垂れた液体が、そのまた隣の石像に、ぽたり、ぽたりと落ちていく。
〈year 2061〉
すきだなあ。