chapter:獅子王司

〈year 2219〉


  ……ああ、まただ。ぷつり、ぷつり、飛び飛びになってる。考えてる途中で、切れてしまう。
 思考が飛んだら、すぐさま思い出して、繋いでかなきゃ。意識を手放したら、もう起きれない。そんな気がする。
 また最初から一つずつ、思い出す。何度でも。繰り返す。
 初めて千空に会った日のこと。 笑顔。千空のすきなところ。



〈year 2351〉


 こわくない、は嘘になる。こわいよ。


 
 発掘した石像が一人、消えている。
 見張りの者は気付いてさえいなかった。責めるつもりはない。石像は、いくらでも辺りに転がっていた。
 掘り起こされたのはつい先日。優先的に復活させる人間ではないにしろ、未来ある少年少女たちだ。然るべき場所に移動させる、そのはずだった。そもそも、今日はそのために来たのだ。
 誰が、なんのために。タイミングだけで言えば、発ったばかりのゲンの仕業と考えた方が自然だが。理由とメリットがない。彼に任せた仕事とも、関連性は――いや。
 確か、女の子だった。それも、千空と同じか、一つ下くらいの。
 しゃがみ込んで、目を凝らす。石像があったはずのそこは、少しだけその形に土を窪ませていた。
「うん、そうか。ゲン、やはり君の仕業ではあるようだね」
 復活時に剥がれ落ちる石片は、一つも残っていない。けれど、石像を引き摺っていったような跡もない。
 つまりどちらにせよ、証拠隠滅をはかった証拠、ということだ。
 彼のメンタリストとしての仕事ぶりは信用していた。こちらに報告をしなかった旨は、戻ってきてからじっくり聞けばいい。
 さて、復活液はおいそれと作れるほど簡単ではなく、ゲンには洞窟で採取しているものが硝酸であることさえ教えていない。となれば、導き出される結論は一つ。ゲンは、持ち去ったのではない。
 それは硝酸と不屈の精神が齎した、奇跡の復活を意味していた。
 復活液を使わずに復活する条件は、直接聞き及んでいる。
 “彼”を殺した時に――復活液のレシピと、共に。
 推測は恐らく正しい。だからこそ、豪運としか言いようがなかった。何か一つでもずれていたら、彼女は、今も石像のままだった。
 そして偶然、復活に居合わせたゲンが、彼女を連れて行った理由。
「――千空」
 答えを、口にした。
 決して有り得ない話ではない。確率の問題だ。元いた場所が同じなら、流れ着く場所もまた、というだけ。大樹も、この近くまで流されていたと言っていた。他にも顔見知りがいた可能性は、十分に有り得る。
「……もしかして、うん。君の、ガールフレンドだったりするのかい」



〈year 2489〉


 でも、もっとこわいのは。
 もう一度、千空にすきって言えないこと。