第三話 ダッチワ〇フを育てます
スイにバレてしまったからには、フェルには絶対バレないようにしたい。そこで俺は工夫した。
例えば寝床を作る時は、土魔法で普通に箱型の家を作る。裏手に回ってこっそり植木鉢を置いたら、植木鉢を囲むように、かつ家と同じ幅の壁を作って、家と接続する。
なんちゃって隠し部屋の出来上がりだ。
外観と中の広さが多少一致しなくても、植木鉢一個分のスペースだし、まず気づかれないだろ。
そして前からは見えない、かつスイしか気付けない位置にスイ専用の出入口を開けてやる。
これで完璧だ。
街にいる間はフェルもドラちゃんも獣舎にいるから、宿の部屋で堂々と出しておけるんで楽でいい。うん、従魔、早速増えたよね。今度は餃子に釣られたピクシードラゴンのドラちゃんだ。
スイにはフェルと同じ理由でドラちゃんにも内緒にしといてもらったよ。というか、スイが自分から言い出した。『水のあげすぎはダメだもん』だって。うんうん、スイたんはいい子だね。
カレーリナの街を出発してからえーと……14日? 2週間くらいか。
気付けばアルラウネモドキは、俺の肩くらいの大きさになっていた。
おかげでアイテムボックスから取り出すのも一苦労だ。フェルたちが狩ってくる魔物に比べたらマシだけどさ。
「よいしょっと」
『ハナちゃんー!』
宿の部屋に入ったらまず植木鉢を出すのがお約束みたいになりつつある。出さないとスイに催促されちまう。スイはまだまだ子供だし、面倒見るってこと自体が楽しいのかもね。
世話ったって水やりなんてすぐ終わるから、スイは植木鉢の周りをぴょんぴょん跳ね回る。
俺の見ていない間にもよく話しかけてるみたいだ。
スイは可愛いなあいい子だなあという気持ちと、でもあれ大人の玩具になるんだよな……という気持ちの板挟みのストレスで死にそう。
一つの球根からは一つしか実が生らないそうなので、スイが見てないうちにささっと収穫しちゃえば大丈夫……だと思いたい。
今のところ、見た目はただの観葉植物。あんまり詳しくないけど、パキラとかそんな感じ。一人暮らしの部屋に置いてあったらお洒落なやつ。
見てよこの枝ぶり、葉っぱの茂り方、あんなにちっちゃな双葉からこんなに大きくなって……。
成り行きとはいえ名前を付けてしまったのもあって、愛着もわいてしまい、今ではすっかり俺の可愛いハナちゃん(仮名)だ。意外と植物を育てるのって楽しいんだな。将来的にどこかに拠点を構えるなら、ガーデニングとか、家庭菜園とかやってみてもいいかもしれない。
しっかし、育ったなあ。
植え付けから数時間で芽が出るくらいだし、まさかとは思ったけど。もうそんなに出しておかなくても実が生るんじゃないか?
少し目を離した隙にあれ? なんか大きくなってない? なんてこともしばしばだったし。
うーん、異世界の植物恐るべし。
いや待てよ、そう言えば土から肥料まで全部ネットスーパーで揃えたんだった。そのせいもあるか?
鑑定してなかったな。鑑定。
【 園芸用培養土(強化版) 】
異世界の園芸用培養土。異世界の肥料と、異世界にはない魔素と上級ポーションにより強化された。植物の成長速度を格段に高める。
oh……。
魔法のある世界だから魔素はまだわかるよ、上級ポーションてもしかして……
「スイ、もしかして植木鉢に水以外上げた……?」
『うんっ、ハナちゃんが元気ない時にね、元気になあれーって元気になるお薬あげたよ』
「そっかあーーーー」
ど、通りで……。
ま、まあ育ちが早いのはいいことだよな、うん。
「あ、そうだ。スイ、ダンジョン潜ってる間は植木鉢出さないからな」
『えー? ハナちゃんのお世話しないのー?』
「ダンジョンにはたくさん魔物が出るし、危ないだろ? スイとフェルとドラちゃんが強いのは知ってるけど、フェルとドラちゃんには内緒にしてるし」
『うー、わかった。ハナちゃん、スイ頑張っていっぱい敵をビュッビュッて倒してくるからねー』
他の冒険者もたくさんいるしね。安全な場所でもダンジョンの中で枕元に植木鉢出してる奴がいたら「なんだコイツ?」ってなるでしょ絶対。
はあ、明日からダンジョンか。やっぱりちょっとだけ気が重い。
『あるじー、おやすみ。ハナちゃんもおやすみー』
「おやすみー。……おやすみ」
なんとなく俺もスイに釣られて声をかけた……ら、葉っぱが揺れた。
って気のせいだよな。