第五話 とんでもない職業だった
「えっと、俺ので悪いんだけど、まだ着てない新品だから……」アイテムボックスからクレールの街で買ったシャツとズボンを渡してあげた。と、とりあえず服を着てもらおう。いや正直残念な気もするがって俺の馬鹿。そんなこと言ってる場合じゃない。
女の子、もといハナちゃん(仮名)は何度かペコペコお辞儀して、慌てたように布団を被りながらその中で着替え始める。
『服着なくちゃ恥ずかしいなんてさー、まるで人間みたいだな』
『うむ。見たところはアルラウネのようだが、これだけ人間に擬態出来る個体はそうはおるまい』
ぎ、擬態?
そう言えばゼラムさんに見せてもらったアルラウネモドキは薄緑だった。きっとアルラウネも近い色合いなんだろうな。
ハナちゃん(仮名)は肌も髪も普通の人間に見える。
違うところは頭に本物の花が咲いてるのと、毛先がちょっと緑なのと、蔓が2本生えてることくらいか。
というかアルラウネモドキ育てたのになんでアルラウネになったんだ??
『ハナちゃん終わったのー?』
『……』
あ、布団から出てきた。って俺が貸した服ブカブカだな。当たり前だけど。
なんかこれってあれだ、あれ、彼シャツっぽい。い、いやこれは不可抗力だもんね。ね、狙ってやってないし。
アルラウネってわかったのに、見た目もほとんど人間だし、何より反応が普通の女の子だからドギマギしてしまう。
ハナちゃん(仮名)は俺のシャツからちょっとだけ出てる手を見つめて、開いたり閉じたりした。それから自分の体をぺたぺた触って確かめている。
と思ったらぴょんぴょん飛び跳ねたり回ったりして、なんだろう? 長い髪の毛と頭の花がふわふわ揺れていい匂いがする。
もしかして、動けるのが嬉しいのか? ずっと植木鉢だったもんなあ。
スイも一緒にその周りをぴょんぴょん跳ねてる。
うん、可愛い×可愛いは超可愛いだな。
ほんわ~と癒されてたらハナちゃん(仮名)が急にボロボロと泣き始めた。
ええーーー!?
「どっどうしたの!? どっか痛い!? おいフェルっアルラウネって泣くのか!?」
『知らん。人を惑わす種族だからそれくらい備わってても可笑しくはないが』
ぶんぶん首を振って身振り手振りで何かを訴えようとしてくれてるが、さ、さっぱりわからない。
『む? ……お主、こやつの鑑定をしてみろ』
「え? 鑑定?」
すっかり気が動転してたけど、そっか鑑定ならステータス異常とかもわかるのか。
『……!!』
瞬間、ハナちゃんが更にぶんぶん首を振って止めようとしてくる。こっちの胸倉を掴むような勢いだ。流石にこれは俺でもダメダメって言ってるのがわかるぞ。
「ってもしかして、鑑定されたくないの?」
こくり。ハナちゃん(仮名)が頷く。
え、どういうこと? 鑑定がなんなのか、既に知ってるってことだよな。生まれたばっかなのに知性ありすぎじゃない? フェルは『いいからさっさと鑑定しろ』しか言わないし。
「ご、ごめんねちょっとだけだから……」
『~~~っ!!』
いやちょっとだけってなんだよ俺。ごめんなさい、全部見えます。
鑑定っと。
【 名 前 】 ハナちゃん(仮名)
【 年 齢 】 0日
【 種 族 】 一応アルラウネ(元人間)
【 職 業 】 ダッチワイフ 異世界からの転生者
【 レベル 】 1
【 体 力 】 300
【 魔 力 】 300
【 攻撃力 】 234
【 防御力 】 240
【 俊敏性 】 198
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス 触手
【固有スキル】 ステルス 擬態
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『転生者とは珍しいな。我も初めて見たぞ』
『てんせいしゃってなーにー?』
『前世の魂と記憶を受け継いだ存在だ。なんでも、転生者は神から特殊なスキルを一つだけ授かれるらしい。こやつは二つ持っておるが』
『あっ、一つは転生前のやつじゃねーか? よく知らねーけど、そん時のやつと合わせて二つなんじゃねぇ?』
『ほう、なかなか鋭いな。ドラの言う通りかもしれん。魂と記憶を受け継いでいるなら、スキルも受け継いでいても可笑しくはない』
『フェルおじちゃんとドラちゃんのお話むずかしくてわかんない……』
『あー悪ぃ悪ぃ、難しかったな』
『……つまり、こやつは人間の生まれ変わりなのだ』
『えー! ハナちゃん、昔人間だったのー? すごーい!』
『そういうことだ。ふむ、異世界からの、ということはもしやお主の同郷か? よかったな』
よくない………。
全然よくないぞ………………。
冷や汗がヤバい。もう全身から吹き出てる。シャツびっしゃびしゃ。
顔面蒼白でちらりとハナちゃん(仮名)を見ると、全てを諦めたように顔面を両手で覆っていた。
色々突っ込みたいところはたくさんある。
あるけど、あるんだけど、鑑定持ちってことはだよ…………
いつでも自分のステータスが確認って出来るってことで…………
この反応を見る限りもしかしてご自分の職業が何か知っていらっしゃる…………?
『して、この〝だっちわ〇ふ〟とは何だ?』
うわーーーーーーーーーーーッ!!!
ごめんなさいーーーーーーーーーッッ!!!