第九話 俺の従魔たちが仲良し

 ひと時のやわらかさを堪能させてもらった俺は、外に出たら案の定取り囲まれるわ、エルランドさんは駆け付けてくるわ。結局問答無用で冒険者ギルドに連れていかれることになりました。
 ドロップ品は大量にあるから整理したいし、早いとこハナちゃんと話し合いたいし、まずは宿に戻りたかったんだけどなぁ。それに、可及的速やかにハナちゃんに服と、し、下着を用意してあげなければ。……あれ?
 あーっ、というか、ダンジョン内で用意するべきだったじゃん! 服はこっちの世界のやつを買わなきゃって思い込んでたけど、姿を隠せるなら別に関係なかったし、そもそもノーパンノーブラって気づいた時点でせめて下着だけでも用意するべきだった!
 エルランドさんがいるし、念話でこっそり謝っとこう……。
『ごめんハナちゃん、ダンジョン出る前に服とか全部用意すればよかったね……』
『え? ……あ、そっか、いえあの、お、お構いなく……!!』
 構うよ。やわらかさを堪能してる場合じゃなかったよ。これじゃ紳士失格だぜ。
『私が慌ててスキルを使っちゃったからですよね。……その、朝からずっとびっくりさせちゃってごめんなさい。ほんとに気にしないでください。ほんとに……!! 用意してもらえるだけですごくうれしいので……!!』
 え、ええ子や……。ありがとうハナちゃん。裸足じゃ歩かせられないから、フェルに頼んでそのまま背中に乗っててもらうことにしたよ。あとで靴のサイズ聞かなくちゃな。……し、下着のサイズもか……? いやいやいやいやセクハラじゃん。ど、どうしよう。
 思わずちら、と振り返って見ても、フェルがいつものようにノシノシ歩いてるだけだった。そりゃそうだ。ステルス、すごいスキルだな。念話もしてるのに、本当にいるんだよな? って頭が混乱しそうになる。
 とか思ってたら、しゅるんと手首に何かが巻き付いてきた。
「うわっ」
「? どうしましたムコーダさん」
「い、いえ何でもないです」
「そうですか。さぁさぁさぁ、早く冒険者ギルドに行きましょう!」
 もしかして、ハナちゃんの蔓か?
『す、すみません向田さん、私です』
 あ、やっぱり。
 なんというか不思議な感触だ。植物って言われればそうだし、やわらかくて弾力があってしっとりしてる。モチモチというか。
 蔓が手首から離れていくと思ったらすぐ手の平側にやってきたので、思わず握っちゃったよ。
『こ、ここにいますよー……なんて……』
 ハナちゃんの方見てるってバレちゃったか。えへへとハナちゃんが照れ笑いするのがわかった。な、和む~。何その控え目な自己主張。
『俺もどこにハナちゃんがいるか把握出来るし、ステルス使ってる間はこうしてくれると助かる』
『……! はい!』
 それにしても蔓、伸ばせるんだな。スイの触手みたいに伸縮自在なのかもしれない。ハナちゃんがフェルの背中から伸ばしている蔓を掴んで、前を歩く俺の図……
『これ、ちょっと犬の散歩みたいだな』
『ぶふっ』
『……おい待て。その犬とは我のことか?』
『ひい、そん、そんな恐れ多い、ふふふっ』
 はは、恐れ多いとか言いながら完全に笑ってるよハナちゃん。フェルには悪いが女の子の笑顔はプライスレスだよ。見えなくてもね。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「では、次は29階層の砂漠についてお聞かせ下さい」
「はい。もちろんこの階層にもセーフエリアはありません。ダンジョン内ですが擬似的な太陽があって、砂漠らしく昼間は灼熱、夜間は極寒でしたよ。フェルの足でも2日かかりました」
「むう……。砂漠越えとなると並大抵の冒険者では歯が立たなそうですね。まずそこまで辿り着ける者が限られてきますが……水分補給に防暑と防寒、物資はいくら用意しても足りなそうですし、アイテムバッグやアイテムボックスは必須ですね。出てきた魔物も詳しくお願いします」
「はい。ええと、まずはサンドスコーピオンが100匹ほど現れましたが、フェルがジャイアントサンドスコーピオンを倒すとちりぢりに逃げていきました」
「ああ、ジャイアントの方が操っていますからね。しかし100匹とは……Sランクの冒険者でも砂漠地帯に住む魔物とは滅多に対峙しないでしょうし、これは注意喚起が必要そうです。他には?」
「他には……」
 冒険者ギルドに連行された俺は、以前入った時とダンジョンの様相がまるで違うと知ったエルランドさんに詳しく話をすることになった。
 ……エルランドさん、ちゃんとギルドマスターだったんだな。
 ドラゴン狂いの変なエルフって印象しかなかったけど、ちょっと見直したぜ。
 メモを取りながら質問してくるエルランドさんは真剣そのもので、俺も間違った情報を伝えるわけにはいかないから、時々フェルに確認を取りながら答えていく。やっぱ長生きしてるだけあって魔物にも詳しいしな。
『お腹すいたねー』
『腹減ったーー』
 そんでまあ、そりゃ騒ぐよねうちの子たち。窓の外を見てみると……げ、だいぶ日が昇ってるよ。エルランドさんの話はまだかかりそうだ。
『えっと……しりとりでもする?』
『えー? なにそれー』
『私の国の言葉遊びでね。前の人の言った言葉の最後の音を取って、それで始まる新しい言葉を交互に言ってくんだよ。しりとり、りんご、ごりら、らっぱ、みたいな』
『ふーん、言葉の尻を取るからしりとりか』
『最後の言葉にん、がついたら負けだよ』
『やるー! じゃあスイからねっ、〝あるじ〟!』
『じ!? じ……? じ……じゅ、〝重罪〟』
『重いな』
『次ドラちゃんの番だよー』
『えーっ、俺もやるのか?』
『ねーねーハナちゃん、ごりらってなあに?』
『やんねえのかよ』
『おい、騒がしいぞ。……〝稲妻〟』
『お前はやんのかよ』
 うん、俺の従魔たちが仲良し。
 その後もわいわいしりとりするみんなの声を聞きながら説明を続けて、終わったのはお昼をだいぶ過ぎてからだった。
 俺も腹減ったよ。

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