第十話 背後霊って何??

 遅い昼飯兼夕飯は、簡単に焼肉丼にした。
 本当は先にハナちゃんとの諸々を済ませたかったのに、腹減ったーの大合唱だよ。
 ハナちゃんが見かねて『ご飯にしましょう?』と言ってくれて、結局まだ話も出来てないし服も見れてない。
 うーん、気を遣わせてばっかだな。焼肉のタレとカイワレのついでに買うわけにもいかないし、せめて服はじっくり見てもらって、好きなものを選んでもらおう。
 ……問題は下着だな。やったこともやる機会もなかったけど、俺のネットスーパーのウィンドウ、他人でも操作出来るのか? そしたら俺が見なくても済むし、ハナちゃんのプライバシーは守られるはず。試してみる価値はあるな。出来なかったらごめんなさいしてスリーサイズを教えてもらおう(キリッ)
 宿の中庭は人気もないし、ステルスは解除されてて、ハナちゃんは俺が料理をするのを楽しそうに見てる。ちょっと照れる。
『ここの焼肉のタレおいしいですよねぇ。うちもいつもこれだった気がします、中辛』
「おっ、中辛派? 美味いよねぇ。定番だけど飽きが来ないっていうか」
『わかります、安定のおいしさですよね。瓶なのがちょっと捨てるの面倒なんですけど』
「あー、わかるわかる。キャップのプラ部分と分けなきゃいけないし」
『あれ外すのって地味に難しくありません!? 全部スイちゃんが食べてくれるってすごい助かりますね』
 た、楽しい。なんてことのない焼肉のタレトークなんだけど、異世界でするとは思わなかった。当たり前に知ってることを当たり前に話せるって、なんとなく落ち着くね。
 ブラッディホーンブル、ワイバーンと肉を替えて焼肉丼をどんどん作ってく。食うペースが早いのなんの。ハナちゃんのご飯はこの後に作るよ。体が植物だからか、あんまり食べなくても平気らしい。自分の分はみんなのお腹が落ち着いてからでいいって、また気を遣わせちゃったなあ。気遣い屋さんなのか?
 基本的には日光と水があれば活動出来るみたいだけど、『む、向田さんのご飯は食べたいです……』だって。
 そんな嬉しいこと言われたら張り切って作っちゃうぜ。
 ちょうどフェルが地 竜アースドラゴンの肉でもおかわり作れって言い出したから、ハナちゃんにも食べてもらおう。俺も食いたい。初めてのドラゴン肉、きっとびっくりするぞ。
『それにしても……ふふ、みんな肉食なんですね』
 呆れるほど山盛りの焼肉丼を見て、ハナちゃんが微笑ましそうに言う。
「ははは、肉食ばっか集まる法則でもあるのかな? ハナちゃんも肉食だもんね」
『えぇ? お肉ももちろんすきですけど、魚も野菜もすきですよ。でも肉食ってほどじゃ…………あ、』
 ガッツリ生姜焼きを食べた今朝に思い当たったのか、ハナちゃんはみるみる顔を赤らめた。い、今更? やっぱり朝から生姜焼きは恥ずかしかったのか? 乙女心は複雑過ぎてわからんぞ。
『あのっ、今朝のは別に、お、お肉だいすき! って選んだわけじゃなくて……!! 最初にフェル様が食べてたのを見てからずーーーーっと向田さんの生姜焼きが食べたくて、つい……!!』
 しどろもどろに言い訳するハナちゃん、ちょっと可哀想だけど微笑ましい。うんうん、生姜焼きが食べたかったんだねーそっかーフェルが食べてたのを見て……ん?
 確かに生姜焼きもダンジョン準備にしこたま作ったけど、ダンジョン進んでる間はハナちゃんの植木鉢、1回も出してないぞ。最後のボス部屋だけだし。
 アイテムボックスに仕舞われてたのに、どうやって見たんだろ。
「ハナちゃん、それっていつ? どうやって?」
『いつってもちろん向田さんがフェル様と従魔契約を結んだ時に――――はっ』
 …………ハナちゃん、今なんて言った? 俺がフェルに従魔契約をさせられた時?
 あれは召喚されてからすぐ、王都を脱出する道中だったよな。
 モドキの球根を手に入れたのはカレーリナの街を出る時だ。球根の頃の記憶はあるみたいだけど、それにしたって可笑しい。
 なんでハナちゃんがその時のことを知ってるんだ??
「え? え? どういうこと?」
『…………私ってほんと馬鹿…………』
 ハナちゃんはまたもや全てを諦めたかのように両手で顔面を覆っている。
「は、ハナちゃーん……?」
『向田さん……』
 恐る恐る声をかけると、ハナちゃんは意を決したように俺の顔を真っ直ぐ見つめて、それから思いっきり勢い良く頭を下げてきた。
『ごめんなさい、私……私……転生前は、向田さんの背後霊でした……!!』
 …………。
 はい?

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