第十六話 犯人がわかりました

 途中で昼食と休憩を挟んで二人がかりでやったにも関わらず、結局一日かかっちまった。メモに使った紙の束が分厚いわ。量も量だし、全部買取してもらうのは難しいだろうなぁ。
 でもこれで買取に出す準備が出来たから、早速明日冒険者ギルドに行く予定だ。後回しになっちゃったハナちゃんの服はその前に買いに行くよ。
 昨日はエルランドさんにめちゃくちゃ時間取られちまったからな。明日は流石に大丈夫だと思うけど、善は急げって言うし。
『やっぱりバレるとしたらそこからだと思うんですよね』
「うーん、まずバレないと思うけどなぁ」
 夕食後にデザートを食べながら、ハナちゃんと話し合う。
 ちなみに俺は抹茶のケーキ、ハナちゃんはシュークリーム。「一個でいいの?」って聞いたら『あんなには食べられないですよ!?』って言われたよ。ま、まあ確かに。体のちっちゃなドラちゃんでさえケーキ三つとプリン食べてるし。甘いものはすきだけど、同じ量食べろって言われたら俺もちょっとキツい。
 で、話し合いの内容というと、今後ステルスを使っていくかどうかだ。
 とくに街中、滞在中ね。
 ハナちゃん的には、せめてちゃんと話せるようになるまでは隠れてた方がいいんじゃないか、やっぱりバレた時に俺が罰則受けないどうかが心配、だそうで。
 どうやら俺はテイマーとして結構知られているようだし、アルラウネってバレた時にはもちろん、従魔登録をしてないこともバレるってことだ。
 でも喋れないからって、まさかこの子が魔物だなんて誰も思わないだろ。風邪引いて声が出ないのかなーとか無口な子だなとーかそれくらいでしょ。心配し過ぎじゃないか?
『人として生活出来るように、って向田さんのきもち、すごくうれしいです。だからこそ、余計にバレたくないっていうか……』
「念には念を?」
『念には念を(キリッ)』
 真面目な顔してるけどハナちゃん、口元に生クリームついてるぞ。
 微笑ましげに見てたらスイが触手を伸ばして舐め(食べ?)ちまった。
『ついてたー』
『……あ、ありがと』
 ハナちゃんは照れくさそうにスイをつつく。うん、可愛い×可愛いは超可愛いな。
『何を心配しているかわからんが、ハナの気配遮断の精度が高いことは確かだろう。なんせこの我でも知覚出来んのだからな』
 フェルがフンスと鼻を鳴らしてくる。偉そうにしててもお前もめちゃくちゃクリームついてるからな。
『あー、とにかくハナがアルラウネってバレなきゃいいんだろ? 花とか蔓引っ張られたら痛いかもしんねぇけど、そうじゃなきゃわかんないって。それよりもっとプリンくれっっ』
 いや今日はもう食い過ぎだから! ドラちゃん、すっかりプリンの虜だな。
 みんな甘いものが好きみたいで良かったわ。ハナちゃんも『まさかまた不三家を食べられる日が来るなんて……』って感慨深げだった。
 それにしても、フェルでも誤魔化すことが出来るステルスと、花と蔓が髪の毛に生えてる程度の擬態かぁ。
 うーん。比べてより安全なのはやっぱり前者だよな。
 そういうわけで、今後もステルスを活用していく方針に決まったよ。一番大事なのはハナちゃんの意向だしね。
 明日の買い物はとりあえず移動中もステルスを使って、試着室がある服屋を選べば目立たずに解除出来そうだな。
 さて、熱狂的なおかわりコールを無視して部屋に移動したら、今夜はもう寝るだけなんですが。
 今朝の件。
 そう、何故か床で寝てたはずの俺がベッドで寝ていた件について。
 俺が夢遊病じゃないとしたら、スイとハナちゃん、どちらかが俺をベッドに運んだことになる。
 たとえばスイだった場合。
『いつも一緒に寝てるのにあるじいなくてさみしかったからー』
 理由としては全然有り得そうじゃないか? スイたん可愛いねぇってなる。
 でも小さなスイが俺の体を運ぶってなると話は別だ。触手……は無理だな。形状変化に優れているとは言え、やわらかすぎる。あとは俺の体の下に滑り込んでから巨大化してベッドに転がすか、分裂体を道みたいにしてころころ転がしていくか……?
 うん、無理。流石に熟睡してても絶対起きるわ。
 ってことはさ。
 二択しかないってことはさ。
 犯人、ハナちゃんしかいなくない?
「……そ、そう言えば、ハナちゃんの蔓ってどれくらい伸ばせる?」
『? どうでしょう、試してみないことにはわかりませんが……フェル様の上から向田さんまで伸ばした時は、まだまだ伸ばせそうでした』
「そ、そっか……ドロップ品数える時も使ってたけど、結構重い物も運んでたよね……?」
『あ、はい! 腕力はたぶん元のままなんですけど、スキルに触手ってあるからでしょうか? ここだけ意外と力持ちみたいです!』
 うん、絶対ハナちゃんでしょ。
 作業中普通にオークの肉とか皮とか蔓で運んでたもんな。俺一人くらい余裕で運べるだろうし。
 両手で蔓を掴んでムン! とちょっとだけ得意げに笑うハナちゃんの後ろで、スイも触手で同じポーズを取って真似してる。可愛い×可愛いは以下略。
 ハナちゃんが犯人だとして、つまりどういうことだ?
 酔っ払ってたにしても、なんでハナちゃんが俺をベッドに運んで一緒に寝ようとしたんだ??
 どうしても昨日の『私に出来ることならなんでもします』発言が頭を過ぎっちまう。
 ……じ、実は誘われてるのか?
 ……いやいや。いやいやいやいや。ほらだって……スイもいるし……だよな……だよね……?
  違うって言ってくれぇぇっ。

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