第十七話 添い寝フラグ
片手でスイを抱っこして、もう片手でステルスで消えてるハナちゃんの蔓を握って、中庭から部屋に移動する。ハナちゃんの意向を尊重するって言った手前今更なんだけどさ、街中でステルス使ってる間はど、同室ってことなんだよな……。まさか獣舎で寝てもらうわけにはいかないし。
つまり、なおさら事実確認を本人に直接取らないといつまで経っても俺が安眠出来ないってことだ。
さ、誘われてないとしたら、寝惚けて触手が勝手に動いたって結論で間違いないはず。
もし今朝の添い寝がハナちゃんの意志で行われてたとしたらとんだポーカーフェイスだよ。多分ハナちゃんには無理でしょ。
だってハナちゃんて隠し事が下手くそっていうか……迂闊っていうか……うっかりが過ぎるっていうか……。
勝手に触手が動いたって事実、これがマジでヤバい。
何でってそりゃハナちゃん自身がダッチワ〇フとして責任を感じてたからだよっ。
酔っ払ってたとは言えそんなハナちゃんが寝てる間の無意識下に俺を布団の中へ引きずり込むって相当ヤバいでしょっっ。
それって、め、めちゃくちゃ責任を果たそうとしてないかっ?
気持ちは嬉しくないと言えば嘘になるかもしれないけどいやいやいやいやダメです。ダメ。パワハラセクハラダメ絶対。
部屋に到着して扉をしめるとハナちゃんがするっと姿を現した。うーん、やっぱりすごいスキルだな。スイはベッド目がけてぽんぽん跳ねてった。
まずは触手が寝惚けてたんだよね? って伝えて同意を得て、ホントのホントのホントにダッチワイ〇のことは気にしないでってしっっっっかり念押ししなければ……。
「あ、あのさ、ハナちゃん、その触手なんだけどさ、」
『ありがとうございます、向田さん』
「へ?」
『え? さっきから色々聞いてくれて……この体になって間もない私を気遣ってくださったんですよね』
『まもないー?』
『えっとね、私、生まれたばっかりでしょう? まだ体の使い方とか、わからないことがいっぱいあるの。だから向田さんがね、それを心配してくれたんだ』
『あるじやさしいー!!』
えへへとはにかむハナちゃんとぴょんぴょん飛び跳ねるスイに、俺は何も言えなかった。
い、言えるわけないだろまさか犯人特定の為の質問でしたなんてっ。
確かにハナちゃんの体は心配っちゃ心配なんですが意味合いの方向が違うっていうかなんていうかごめんなさい。
というかハナちゃん俺のことめちゃめちゃ好意的に受け取りすぎじゃないか? あ、ありがたいやら申し訳ないやら。
『考えてたんですが、自分の体を把握するためにも、やっぱり実戦がいちばんかなって思うんです。お世話になってばかりでもいられませんし、レベル上げにもなりますし、一石三鳥と言いますか……だから、がんばりますね!』
が、頑張るってそっちかー!
遠慮しないでって言ったけど、やっぱり気にしちゃうか。気持ちはわかるけどね。
全然平気な人も中にはいるんだろうけど、俺だって例えばずっと奢られっぱなしだったら落ち着かないというか、申し訳なさが勝つっていうか。
「も、もちろんそれは構わないけど、いきなり実戦とか大丈夫?」
『はい! 後ろで見てた時はゴブリン怖いなぁなんて思ってたんですが、なんででしょう? 転生したから? 戦うぞーみたいな気力がわいてくるというか……』
と、闘争本能っ? そうか、転生者とは言え今の体はアルラウネだもんな。そっちに引きずられるってことか? ハナちゃんの話を聞いてたスイが『一緒にいーっぱいやっつけようねー!!』ってはしゃいでる。
ま、まさかハナちゃんまで戦闘狂になったりしないよな……いや別にダメじゃないけどさ。ダメじゃないけど、俺以外戦闘狂なの……? っていう懸念がさ……。
でも既にハナちゃんって俺と同じくらいというか俺よりちょっと強いくらいなんだよね。
うん。これ以上考えるのはやめよう。
どの道俺が一番弱いことには変わらないもんな。泣けてくるぜ。
じゃなくって触手が寝惚けてたってこと言わないとっっ。
『は、ハナちゃんあのさ……』
『はい? あ、今日は私こっちで寝ますね! 昨日ベッドを使わせてもらったので……』
よいしょ、とハナちゃんがアイテムボックスから床に布団を出して敷いていく。
「いやいやいや大丈夫だからスイとベッドで寝て!?」
『えー? あるじ一緒に寝ないのー?』
ややこしくしないでスイちゃん!!
実際いつもベッドにも布団を敷いて寝てるから、床でも大差ないんだよね。野宿の時はブルーシートの上に敷いてるからそれよりマシってだけで。
だから大丈夫って伝えたら、
『じゃあ私が床で寝ても大丈夫ってことですよね!』
全然譲らないんですけどこの子。
あーだこーだ平行線を続けてると、ベッドで跳ねてたスイがぴょんと降りてきて、
『じゃあ今日はこっちでみんなで寝よー』
…………。
…………。
ややこしくしないでスイちゃん!!