第十八話 無理です。

 どうしてこうなった。
『おやすみー』
『お、おやすみなさい』
「お、おやすみ……」
 灯りを消した部屋で布団に入り込み、就寝の挨拶を交わして、すうっと目を閉じる。
 かっと開ける。
 どうしてこうなった。
 川の字。
 俺とスイとハナちゃんのバランスの悪い川の字。
 ところで俺は普段一人分の部屋と獣舎を借りてるんですが。見ての通りスイは小さいし、荷物はアイテムボックスに入れてるし、そんなに広々とした部屋を取る理由がないわけでして。だからもちろん床面積も相応の狭さでして。
 何が言いたいかって俺の隣に布団を敷いたハナちゃんとの距離がちっっっかい。近い。というかほぼ真横だしっ。普通に手が届いてしまう距離。や、やっぱりいい匂いがする。
 ちら、と横目で見るとハナちゃんの寝姿が……スイの体越しに見えた。いやスイも近っっ。
 眼前に迫るスイたんの寝顔に少しだけ心が落ち着いたぜ。ありがとうスイたん。
 ふう、クールになれ向田剛志。旅の最初から俺をずっと見てきた上で、あんなに好意的に俺を受け取ってくれるような子だぞ。
 ハナちゃんが俺をよく思ってくれてるってわかるから、その信頼を裏切るわけにはいかないよな。
 というか当たり前のように同室って時点で俺への信頼値高過ぎない?
 それはもちろん嬉しい、嬉しいよ。
 でもさ、欲望に負けてダッチワ〇フを買うってことはさ、負かされるだけの欲望があるってことでして…………。
 ごめんなさいハナちゃん。
 ぶっちゃけナマ殺しなんだよなぁっっ。
 健康で健全な成人男性の自分が恨めしいぜ。トホホ。
 俺は寝返りを打ってハナちゃんに背中を向けた。せ、せめて少しでも距離を取りたいっていうか。三回連続添い寝イベントなんて発生したら俺の体が色んな意味で持たないわ。
 結局ハナちゃんには触手が寝惚けてたって伝えられてないし。で、でも昨日は酒も入ってたもんな。案外俺の杞憂で終わるかもしれな、
『うぅーん……』
 ハナちゃん。
 杞憂で終わらせてくれハナちゃん。
 ――――隣の布団に一瞬で引きずり込まれた件について。
 言ってた通り力強いねハナちゃん。ギュンて移動させられるんですねハナちゃん。それでいて全く乱暴さを感じない繊細な蔓さばきと申しますかハナちゃん。背中に俺より低い体温と猛烈なやわらかさがぴったりくっついてるんですがハナちゃん。ハナちゃんや……。
 無理!!!
「は、ハナちゃん起きて!! ハナちゃん!! ハナちゃーん!?」
『ぅえっ!?』
 ……情けない俺の叫び声にハナちゃんが飛び起きてくれました。
 無理です。

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