第二十二話 洋服まとめ買い 勘違いされた…

「まあお客様、よく見たら男物のシャツをワンピースのように着こなしてらっしゃるんですね!? 斬新で素敵ですこと!! ……さ、差し支えなければ参考にさせて頂いても!?」
 服を持ってハナちゃんと試着室に入っていった店員さんが興奮気味に声を荒らげている。そっか、メンズライクというか、オーバーサイズというか? 男物を女性が着るようなファッションて珍しいのかも。ハナちゃんが高速で頷いてる気配がする。
 そのまま店員さんに着るのを手伝ってもらったみたいで、少ししたらカーテンが開かれた。
「移動は徒歩が多いとのことでしたので、スカート丈は少しだけ短めの物をご用意させて頂きました。今お召しのブーツも映えますでしょう?」
「ああ、いいですね似合いますね!!」
「…………」
 長いスカート穿いてる人が多かったからなんか新鮮だ。うんうん、ハナちゃんに膝丈スカート、良い。まず着てもらったのは俺がさっき見たいって言った紺色の上下セットに赤いエプロン。思った通り紺地に赤が映える~。
 徒歩が多いってのはま、まあ、嘘は言ってないし。まさか大体フェンリルの背中に乗ってますなんて言えないでしょ。
『へ、変じゃないですか……?』
 ハナちゃんは俺と店員さんに注目されてるからか、ちょっと照れてる。
 俺はグッとしっかり親指を突き立てた。
「エプロンは肌着と同じ扱いですので、基本的にシャツと同じく白やアイボリー、ベージュが一般的です。ですが当店ではこのように何色か取り揃えておりますし、刺繍を入れたり、リボンやポケット、フリル等で装飾しております」
「この若草色のエプロン、さっきの茶色ともオリーブ色ともすごく合いますね」
「ええ、ええ。差し色としても、同系色で纏めるのも可愛らしいでしょう? 長い旅の道中も、色の組み合わせで気分も変わりますし、ちょっとした楽しみになりますよ」
「ああ、確かに。上下の組み合わせでも楽しめますねぇ。例えばこれとこれで……」
「素敵です! ならこちらのスカートは、エプロンの刺繍のお色を合わせてみるのはいかがでしょう」
「なるほど、いいですね! だったらこっちも試してみたいんですが……」
「是非是非。ささ、お客様どうぞ、こちらとこちらとこちらとこちらと、それからこちらも ……」
「……!?」
 た、楽しい。男物より装飾が凝ってて華やかだし、単純に選びがいがあるんだよな。自分で考えたコーデがハマった時の満足感っていうかなんていうか、ハマりそうで怖い。
 あと、試着室のカーテンを開ける度にどんどん装いが変わってくハナちゃんを見るのも楽しい。
 店員さんも流石のプロだから的確なアドバイスをくれる。助かるわあ~。
 おっと、肝心の着心地はしっかり本人に確認しないとな。
「ハナちゃん、肌触りとかはどう?」
「(こくこくこくこくっ)」
 な、なんか必死に頷いてくれたぞ。
『い、いいですもちろん肌触りも着心地もっ! ……あの向田さん、お時間は大丈夫ですか……? そ、その、いつまで試着するのかなって……』
『時間は大丈夫だと思うけど……ってもしかしてごめん嫌だった!? なんか楽しくなってきちゃって……』
『た、楽しい……!?(わたっ私の着せ替えが……!?)……私も色んな服が着れてうれしいんですが、こんなにたくさんは……いらないんじゃ……ないでしょうか……?』
 ハナちゃんの念話の声が少しずつ尻すぼみになっていく。
 ふむ、さてはまた遠慮してるな?
 これからのことを考えれば、正直いくらあっても問題ないと思う。俺だってこの前25着もまとめ買いしちゃったし。一回出発すると次の目的地までは中々洗濯出来ないし、着替えやストックは多い方がいいんだよね。俺たちのアイテムボックスは召喚勇者仕様でほぼ無限に収納出来るから、あればあるほど困らないんだよなぁ。
 ということをハナちゃんに伝えたら『……どうして反論させてくれないんですか?』ってちょっと拗ねられた。えー、可愛いかよ。
「……あらあらおほほ。在庫を確認して参りますので、どうぞごゆっくり」
「へ? あ、はい」
「……? ……!? ……!!」
『これはちがっ、ああーー!! ち、ちがうんです店員さんーー!!!』
 喋れない代わりにあたふたと身振りをしながらハナちゃんが念話で絶叫した。
 え? な、何? 随分含みのある言い方だったけど……あっ。
 念話はもちろん店員さんには聞こえないわけで……つ、つまり俺とハナちゃんが無言で見つめ合っているように見えてたってことかっっ。や、やっちまった、後からじわじわ恥ずかしいんですが!?
「ごごごごごめんなんか勘違いされちゃって!!」
『いえそれは全然構いませんっっ、じゃなくて!! 私の方こそ気付かなくってごめんなさい……は、早く喋れるようにがんばりますね……』
 フェルはまさか喋るとは思われてないから喋ったらびっくりされるけど、ハナちゃんは逆で普通に喋れるって思われるわけだ……。
 あちゃー、マジでやらかした。ごめん、ハナちゃん。よっぽど恥ずかしかったのか真っ赤になってるよ。ふと目がバチッと合ったらススス……と試着室のカーテンを引き寄せて隠れていった。
 うーん、とは言ってもどれくらいの期間で話せるようになるかは未知数なんだよな。街中ではステルスを使ってく方針だけど、また買い物する機会がないとは限らないし……ハナちゃんに恥かかせないように気を付けないと。反省だわ。
 てかハナちゃんそれは全然構いませんてその言い方だと勘違いされてもいいように聞こえるんですが……ま、まさかね。ハナちゃん素で勘違い誘発する発言かましてくるからな。こっちも気を付けないと……。
 2人ともしばらく顔をパタパタ手で扇いでたよ。
 しばらくして店員さんが戻ってくる。
「お待たせ致しました」
 き、気を取り直してハナちゃんの洋服を購入していくぞ。
 ブラウスは白、アイボリー、ベージュの3色を半袖・長袖共に3着ずつ、計18着。フフフ、在庫あるだけかき集めて貰ったった。エプロンはシャツと同じ定番の3色を3枚ずつ、染色された物は若草色、薄茶、紺、そしてとっておきの赤を1枚ずつ。手仕事だからか同じ色の物でも刺繍のパターンが違ったり、ポケットの位置やフリルの有無で印象が違っていい感じだ。
 ドディス……じゃなかった、ボディスとスカートは結局選び切れなかったので全色まとめ買いだ。だってどの組み合わせも良かったもんな~。色はオリーブ色、濃い茶色、紺色、黒、ダークグレーの5色。この辺は男物と同じで地味で汚れが目立たない色だけど、胸元や裾に刺繍が入ってるので上品な雰囲気もある。
 今朝は少し肌寒かったせいか二の腕まで蔓が巻き付いて来てたし、やっぱり寒さに弱いんじゃないか? ってことで、防寒具としてフード付きのケープも購入。服をすっぽり覆うくらいの着丈感で、実は「こちらもいかがですか?」って店長さんが勧めてくれた。前の紐をリボン結びにして着るやつなんだけど赤ずきんちゃんみたいで可愛かったので即決です。
 合計で金貨26枚と銀貨7枚だったけど、オマケして金貨25枚にしてくれた。なんでもハナちゃんの着こなしを真似したいから参考料と、在庫を大量に買ってくれたからだって。やったぜ。
 量も量だし染色と刺繍が売りなだけあって、シャツやエプロンも普通の物より割高だったけどいい買い物が出来たな。
「色々相談にも乗って下さって試着もさせて頂いたのに、オマケまで……ありがとうございます」
「(ぺこり)」
「いえいえ、こちらこそ! やはり試着してみないとわからないこともありますし、何より着せ甲斐もございましたので……ドランの街にお立ち寄りの際は、また当店をご利用下さい」
「ええ、是非」
「(こくこく)」
 だよね、途中で店員さんもハナちゃんの着せ替え楽しくなってたもんね。俺もだけどさ。
 ハナちゃんは何度もお礼を言ってくれて、『絶対絶対お返ししますからね! フェル様に戦い方教えて頂きます!!』ってフンスフンスしてたよ。ま、マジか。いやもう既に狩りでどうにかする気満々じゃん。
 ……フェ、フェルにはあんまりハナちゃんを無茶させないように言っとこう。
 そんなこんなでようやくハナちゃんの装備が整った。

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