第二十三話 フェルとハナちゃん、狩りに行く

 冒険者ギルドに行った後ダンジョンの汚れを綺麗さっぱり落とすために人気のない街の外に来たんだが。
『フェル様、どうか私も狩りに連れて行ってください!!』
 ブラッシングと水洗いが終わったフェルが早速狩りに出かけるとか言い出したもんだから、すかさずハナちゃんが申し出た。
 俺、こんなに綺麗な最敬礼、初めて見たかもしんない。
 多分測ったらきっかり45度あるんじゃないか? ……か、体に染み付いてんのかな。時々社畜の片鱗が見えるハナちゃん、泣けるぜ。グスッ。
『フェル様にとって足手まといでしかないとは思いますが、少しでも早くこの体で戦えるようになりたいんです。お願いします!!』
『……ふむ、どこぞの意気地なしと違ってハナには根性があるな。良かろう、特別に我が軽く指南してやろう』
『ほ、ほんとうですかっ!? ありがとうございますフェル様、光栄です!!』
 ……どこぞの意気地なしって俺のことだよな。くそうフェルめ、すき放題言いやがって。俺は忘れてないからな、無理やりゴブリンの集落に放り込まれたり無理やりダンジョンに連れてかれたり……ま、まあおかげでファイヤーボールとストーンバレットは習得出来たんだけどさ。でも俺は慎重派で安全第一なんです。
「おいフェル、いくらハナちゃんがやる気だからって無茶させんなよ。ハナちゃんも初めての実戦なんだから無理しないでね」
『ふん、本人がこう言っておるのだ。お主が口に出すことではない』
 う、うるせえやい。そりゃ俺が行ったって仕方ないしスイとドラちゃんもお風呂待ちだしフェルの狩りにはなるべく着いて行きたくないにしたって、やっぱり心配じゃんか。
 今は一応アルラウネって言ったって、ハナちゃんは普通の女の子なんだぞ。
 ま、まあ転生したせいか闘争本能は備わってるらしいけど。
『心配してくださってありがとうございます、向田さん。体の使い方、少しでも覚えてきますね』
『同じ従魔のよしみだ、ハナよ、我の背に乗ることを許可する』
『……!! 恐縮です!!』
 ……なんかハナちゃんて俺が勇者召喚されて最初から見てた割りにはフェルのことめちゃくちゃ敬ってる感じがするよな。実際様付けだし。ブラッシングもハナちゃんがフェルの毛並みを褒めちぎりながら進めてくれたからちょっとやりやすかった。
 フェルもフェルで満更でもないっていうか、より伝説の魔獣らしく振る舞おうとしてるっていうかさ。
 食い物に釣られたフェンリルなのにねぇ。
 なんとなく解せぬ。
『ではな』
『いってきます!』
『いってらっしゃーい』
『肉よろしくなー』
「いってらっしゃ……あっフェルお前走る速度加減しろよなーーーーって行っちまったよ……」
 あっという間にフェルとハナちゃんは見えなくなった。
『やっと風呂だなっ、早く入ろうぜ!』
『わーいお風呂ー』
 俺たちも風呂に入るかね。ハナちゃんには戻ってきてから一人でゆっくり入らせてあげよう。
 飯の前だからフェルも遠くまで行かないだろうし、腹減ったら帰ってくるだろ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

『移動しながら手短に話すぞ。魔力を体に巡らせることは出来たのだな』
『はい。……は、話せば長くなるんですが、実は以前フェル様が向田さんに教えていらっしゃるところを拝見しておりまして……』
『ふむ……? まあよい、やり方がわかっていれば話は早い。アルラウネなら水・風・土は問題なく使えるはずだ』
『種族的にやっぱり火は難しいんでしょうか?』
『そうだ。仮に火の女神アグニ様の加護があったとしても、耐性がつくだけで適性が生まれるわけではない』
『なるほど……(0+1は1だけど0×1は0みたいな感じかな……?)フェル様は風の女神様のご加護を授かってらっしゃるんですよね』
『うむ。ニンリル様の加護もあり、我は特に風魔法が得意でな。特別に手本を見せてやる』
『わあ! ありがとうございます!!』
『む? 早速手頃な獲物がいるな。どれハナ、やってみろ。こうやってこうだ』
『は、はい! ……はいっ!?』

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