第二十六話 大体いい匂いのせい

 エロい夢を見ました。
 すっと布団から身を起こしてそのまま両手で顔面を覆う。
 これは俺が健康的な成人男性であるという単なる証拠であって決してハナちゃんをエロい目で見たという証明にはならない。はずだ。だよな、そうだよな。
 そうだって誰か言ってくれっっ。
 はぁ~、マジで俺の脳みそと体正直すぎるでしょ。仕方ないけどさ。た、溜まるもんは溜まってるわけだし。でも身近だからってハナちゃんを性的に消費していいってことにはならないからな。俺は紳士なんです。
 だから夢に見たりつい感触を思い出したりするくらいは許されたい。ごめんハナちゃん。俺も男なんです。
 ハナちゃん側の俺の腕には蔓がぐるぐる巻き付いてるので、起こさないようにそっと外していく。蔓のおかげで添い寝フラグが立たなくなったな。まあ添い寝の原因も蔓だったけど。昨日今日と連続して大丈夫だったし、とりあえず一安心だ。
 それはそれとして俺自身は全く大丈夫ではないのでまずトイレに行きます。
「これはただの生理現象……これはただの生理現象……」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 朝食後お茶を飲んで一息つきながら、皆に今日の予定を伝えた。予定って言っても鳥肉ストックのために冒険者ギルドに行くだけなので、時間はたくさんある。買取品の検討はまだ終わってないだろうしな。
「だから行きたい所とか、何かやりたいことがあったら遠慮しないで言ってね」
『……! ありがとうございます、向田さん』
 ぱあっとハナちゃんの笑顔が輝く。うう、眩しい。夢見がアレだったので直視しづらい。朝飯も夢を振り払うように無心で作ったらフェルが『うむ、お主もわかってきたではないか』とか言ってきたし。この間言われた『いつもこのくらいでよいのだぞ』に従ったつもりはありません。
『えっと、じゃあ、覚えたスキルの練習……? 検証かな? まだちゃんと使ってないので、どこかで試してみたいです』
『あー、あの妙に力が抜けるやつな』
 言いながらドラちゃんがハナちゃんの頭に乗った。うーん、こうしてスンスンと花に身を寄せて匂いを嗅ぐ姿だけ見たら、魔力と花々の蜜が主食って言われるのも可笑しくはない……のか? もう肉食のイメージしかないんだよね。
『うん、ドラくんたちには効いてたみたいなんだけど……』
『む? そう言えばお主は平気な顔をしておったな。まあ我にもさほど効いてはおらぬが』
 よく言うぜ。フェルさん、完全にリラックスしてました。
 でもそうなんだよな、俺だけ平気だったのはなんでだ? ダリルとイーリスにも効いてたはずだから、対魔獣限定ってわけじゃなさそうだし。
『スイはねー、ハナちゃんのお花の匂いすきー』
『うふふ、ありがとねースイちゃん』
 スイが触手を伸ばしてハナちゃんの花をちょんちょん撫でて、ハナちゃんはスイの口調を真似してお礼を言って、蔓の触手でスイをちょんちょん撫でた。うん、今日も可愛い×可愛いは超可愛いだな。
 そんなわけで、冒険者ギルドに行くのは昼食後にして、それまでハナちゃんのスキル検証をすることになった。
 昨日と同様また街の外の人気のない場所に来た、っていうか今回は連れて来られた。
『ハナはまだまだ己の体も力も御しきれておらん。街中で使うには危険であろう。匂いが風に乗って他の人間に作用するかもしれぬ』
 とか何とか偉そうに言って、着いたら早々に狩りに出かけてったよ。絶対そっちが本命だろと言いたいとこだが、フェルの意見も最もなんだよなぁ。確かに昨日もスキルを使おうと思って使ったっていうより、いつの間にか発動してたって感じだった。
『よ、よろしくお願いしますっ』
「こ、こちらこそ」
 スイとドラちゃんも風呂で行かなかったからってフェルと一緒に狩りに行ったので、今日はハナちゃんと2人っきりだ。ちょ、ちょっとソワソワしちまう。だ、だってあんな夢(※自主規制※)見た後だし……。
 いかん。気を取り直してしっかり検証しなくちゃな。
 まずは昨日レベルが上がったハナちゃんのステータスを確認っと。


【 名 前 】 ハナちゃん
【 年 齢 】 3日
【 種 族 】 一応アルラウネ(元人間)
【 職 業 】 ダッチワイフ
        異世界からの転生者
【 レベル 】 8
【 体 力 】 539
【 魔 力 】 487
【 攻撃力 】 382
【 防御力 】 455
【 俊敏性 】 312
【 スキル 】 鑑定 アイテムボックス
        触手 アロマテラピー 風魔法
【固有スキル】 ステルス 擬態


 oh……。
 え、なんかすごく上がってない??
 昨日俺たちが風呂から上がって着替えてゆっくりコーヒー牛乳飲むまでどれだけ遅く見積もっても、1時間経ってなかったと思うんだけど。既に俺とのステータス差がエグい。わかってた、わかってたよ、俺よりハナちゃんが強いってことは。
 わかってたけどさ、むしろこれ、俺が弱すぎなんじゃないか??
 ……考え過ぎるな向田剛志。チートな勇者たちと伝説の魔獣、変異種のスライムにレアなドラゴン、それから転生者と一般人を比べるもんじゃないぜ。グスッ。
 凹んでる場合ではないのでスキルの検証をしていくよ……。

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