第三十五話 発光するハナちゃん
「レベル上げを強要するようなら供え物も止めますから。加護もお返しします」テナントを増やすためだけにレベル上げを神々から迫られています。
強要ダメ絶対。
一応分かっていただけたようだけどさ、勘弁して欲しいよね。
そんでもってレベル上げの強要をしない代わりに金額倍にしろって提案を俺が呑んだらハナちゃん、すごいショック受けて口あんぐり開けてるんだけど……。
神様連中の声は聞こえなくても俺は普通に喋ってるから、ハナちゃんもある程度俺の置かれている状況を理解出来ちゃうんですよね……。
『倍……!? そ、そんな……そんな……代わりも何もないのに……!?』
ホントにねぇ。すまんハナちゃん、昨日これ以上俺の負担が増えないかって気にしてくれたばっかなのに。
というか、先に寝ててくれてもいいのになぁ。
ハナちゃんは布団の上に座ったまま両手をぎゅっと組んでて、明らかにハラハラされてるし心配されてるんだよね。
俺はと言うとベッドに腰掛けてネットスーパーのメニューを開いてる。俺の布団ではスイちゃんが寝てるよ。今日も今日とて床に2組の布団が敷かれてます。
うーん、この分だとハナちゃん、気になって寝れないよな。
どうせなら一緒に見てもらうか?
今はニンリル様ご所望の不三家を開いてるけど神様ごとにジャンルが違うから、見てるうちに何か必要な物や欲しい物が出てくるかもしれないし。いやでもな……。
迷ってたらバチッとハナちゃんと目が合った。さっきから見守られてるから当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ。
(……み、見る?)
(……み、見ます!)
咄嗟のジェスチャーとアイコンタクトが成立した瞬間でした。
ハナちゃんはぴゃっとすぐ立ち上がってすぐ『お邪魔します』と俺の隣に座った。
さっきの固唾を呑む雰囲気から一転してハナちゃんはニコニコだ。
『(な、何はともあれ向田さんの隣はうれしいなぁ……!)』
もしかして最初から見たかったとか? 俺が神様ズを相手にしてたから遠慮してたのかも。ただでさえ気遣い屋さんだしねぇ。
ハナちゃんは見てるだけでも楽しそうで、『これフェル様おすきそう……』とか『このゼリースイちゃんカラー……!』とか『ドラくんはやっぱりプリンだよねぇ……』とかキャッキャしてました。
うむ、いつも通りで何よりです。
ニンリル様のケーキをカートに入れると、次はキシャール様の番だ。
これがまた長いんだよね。
『……お、今日は起きてんのか』
『この前は酔い潰れとったからの』
『なかなかいい飲みっぷりだったよな。同じビール飲んだけど美味かったぜ』
キシャール様にヘアケア製品のメニューを見せてると、後ろから暇を持て余した酒好き神ズが喋ってるのが聞こえた。
それハナちゃんのことですよね?
同じビールって……あ。そういやハナちゃんのあんまりな生い立ちを聞いた時、美味そうなビールを片っ端から購入したんだっけ。アグニ様に送った分と結構種類被ってたかも。
ていうか見てたんかい。
『いつもは見ねえよ、でも酒はやっぱ気になるからな』
心の声拾わないで下さい。アグニ様の言葉にヘファイストス様とヴァハグン様がうんうん頷く気配がした。
覗き見はあんまりいい気分じゃないんですが。どういう仕組みかわからんがニンリル様も俺たちが食う甘味にはうるさいくらいチェックしてくるしなぁ。
まあいいや、今はキシャール様の注文をなんとか終わらせないとな。
「皆様どうぞお受け取り下さい」
段ボールがすぅっと消えていくのを見届けると、騒がしい神々の声が遠ざかっていく。
ハァ~終わった終わった。長丁場になっちまった。さっさと寝よ寝よ、ってあれ?
「……ハナちゃん?」
静かなことに気付いて声をかけると、ね、寝てる……。
そうだよな、もう夜遅いし普段なら寝てる時間だし、って待ってこのままだと俺にもたれかかってきちゃうんですけどいやダメってわけじゃなくて困るっていうか正直役得っていうかその相変わらずいい匂いするってそうじゃなくてっ。
『そこで肩の一つも抱けないあたりがダメなのよねぇ、異世界人クンたら』
「うわーーーーーーーーッッ!!」
『ひぇっ?!』
ヤベッ夜中なのに叫んじまったっ、ああっ隣から壁ドンされたごめんなさいっっ。
挙句の果てに宿屋の人に何かあったのかノックまでされて俺は咄嗟に「すみません何でもないですその虫が! 虫が出ただけでして!」と慌てて弁明する羽目になったのでした。トホホ。
『女神の神託を虫扱いだなんて酷いわね~、まあ今回はホントにおじゃま虫だったから許してあげるわぁ』
このクスクス笑ってる声は……キシャール様だよな?
『む、む、向田さん、どうしたんですか? 何があったんですかっ?』
「ご、ごめんハナちゃん起こしちゃって! 今日分終わったと思ったら急にまたキシャール様に話しかけられてびっくりしちゃって……」
『そ、そうだったんですね……』
『ウフフ、それだけが理由じゃない癖に』
う、嘘は言ってませんし……ってかマジでなんなんだ??
『それがねぇ、私が代表で説明することになっちゃって。早く新商品試したいから手短に』
そうして下さい。
『じゃあはい、せーのっ』
……せーの?
キシャール様の謎の掛け声と共に、目の前のハナちゃんが発光した。
『というわけで、転生者ちゃんに加護を授けたからよろしくね~』
は?