第四十一話 とんでもない飴玉だよっ
ハナちゃんは自分でやったことなのにぽかんとしていた。お、俺も呆気に取られちまった。
まずいつも咲いてる頭の花とは別に小さな白い花が髪中にたくさん咲いた。
それはまあわからなくもない。
確かにちょっと驚いたがハナちゃんは元々植物だし加護も極小とは言えたくさん貰ったんだから、ドライフラワーの材料が欲しいって力を込めたら花くらい増やせても可笑しくはない、気がする。
でもさ、もう一つの方。
コロンて出てきたやつ。
み、見間違いじゃないよな?
がぱっと蔓の先端が開いたと思ったらそこからぺっと飴玉? が吐き出されたんですけど。
『ひ、開くの……??』
ハナちゃんは困惑しきった声で自分の蔓に話しかける。ウネウネと動いた蔓はまるでそうだと言わんばかりにもう一度その先端を開いた。
がぱぁ……。
「ひ、開いた……」
俺も見ました。
そもそものハナちゃんの蔓はいつも髪の毛に隠れていて、首の後ろ辺りから左右に2本生えている。表面はしっとり、感触はつるつるモチモチだ。太さはいつも握ってる感じだと……パスタ一人前分よりちょっと多いくらいか? で、先端だけが少しぷくりと太い。
その部分がまるで蕾が開花するみたいに割れ開いている。
それの一番近い例えがさぁ…………。
『え、エイリアンじゃないです……?』
た、確かにそれにも似てる。
ごめんハナちゃん本当ごめん、俺はエイリアンより真っ先にファンタジー系エロに出てくる触手を思い浮かべましたごめんなさいっ。だ、だってなんか粘液かわからんが少し糸も引いてるしちょっとエロいんですっっ。
……粘液?
ちらっと見るとさっき蔓がぺっと出した飴玉? は作業台の上に乗っている。見た目はきれいな蜂蜜色で飴玉にしか見えない。
……色、似てないか?
何って、ハナちゃんの蔓触手の内側に這ってる粘液とだよ。
「これ、鑑定してもいい……?」
『わわわ私も鑑定します……!』
なんでだろうな、ちょっと、いやかなり嫌な予感がする。
か、鑑定。
【 アルラウネの蜜(固形) 】
鍛冶神ヘファイストスの加護によりアルラウネの蜜を固めた物。超強力な精力剤。効能は三日三晩続く。滋養強壮作用があり、弱った体にも効果絶大。
固形化に伴い香りはほぼ無い。味は甘くて美味。
「ブーーーーーッッッ」
『げほっげほっ、ごほっ』
吹き出す俺とむせるハナちゃんに『どうしたのー、あるじとハナちゃん大丈夫ー?』とスイが無邪気に問いかけてくる。大丈夫と慌てて答えながら俺たちは呼吸を整えた。
せ、せ、精力剤て。
しかも超強力。三日三晩て何っ? どんだけハッスルしちゃうのっ? とんでもない飴玉だよっ。
…………一応アルラウネだもんな、精気を吸おうとする魔物なんだからそういう精力増進作用があるスキルがあっても変ではない。
でも考えてみて欲しい。
折角なら鍛冶もしてみたいな~って軽く思った結果これを勝手に作られてしまったハナちゃんの気持ちを。
というかそんな蜜が体内にあったことも知らなかっただろうに今こうして俺にも知られてしまったハナちゃんの気持ちを。
い、いたたまれねぇぇ。
「えっと、そ、そうだ! ハナちゃんっその髪に咲いた白い花ってもしかして収穫出来るのかなっ?!」
『そそそそそうですね、多分これドライフラワーの材料になるでしょうしっ!?』
「じゃあ試してみよう、とりあえずソレはアイテムボックスにしまっておこっか!?!?」
『はいっっ、そうします!!!!』
バッとすごい勢いでハナちゃんはソレを引っ掴むとアイテムボックスに投げるようにぶち込んだ。
小さな白い花は予想通り収穫出来た。というかしばらくすると勝手にポロポロ落ちていったのでハナちゃんが風魔法で集めてエプロンでキャッチ。
鑑定結果も「通常よりもずっと乾燥しやすくドライフラワーに最適」って出たからこれでアロマテラピーサシェの材料には困らなそうだ。
よかったよかった~。これで加護の効果や新スキルは大体見終わったな~。
え、アルラウネの蜜?
ちょっとなんのことかわかりませんね……。
そうこうしているうちにフェルとドラちゃんが帰ってきたんで早速ソーセージを使ってバーベキューになったんだが、ハナちゃんはずっと浮かない顔をしてたよ。そ、そりゃあそうだよね。
『(は、恥ずかしいスキルばっかり増える……! 向田さんにも知られちゃったし……! ……ううん、アルラウネになるってのはわかってたんだから、し、しっかりしなきゃ)』
こんな時ばっかりは飯に夢中でバクバク食ってる皆には逆に感謝だな。
流石にそっとしておいたげてってなるし……。
『(効果もきちんと把握しておいた方がいいよね……? でも元々私の一部みたいなものなのに、私が使っても……、…………私が使っても…………?)~~~っ』
ああほらまた、思い出してるのか真っ赤になっちゃってるよ。
一人悶絶してすっかり食事が進まないハナちゃんのために、俺は追加でソーセージを焼き始めた。
『(だ、だ、だからって向田さんに使って貰えるわけないよーー!!)』
すまんハナちゃん、せめて俺に今出来ることは、ハナちゃん分のソーセージの確保ぐらいです……。
……ハナちゃん、新スキル取得。
【 スキル 】 開花
魔力・体力を消費し、様々な草花を瞬時に咲かせる。
【 スキル 】 アルラウネの蜜
匂いで人間や魔物を引き寄せる。相手に摂取させると