第四十三話 ネイホフの街でも宣伝活動
ネイホフの街に着いた俺たちは早速冒険者ギルドに向かい、滞ってる高ランクの依頼を引き受けに行った。Aランクのギルドカード貰ってるし、そういう約束だからな。今回の依頼は採掘場に居座っているキュクロープスと、西の森で大量発生しているイビルプラントの討伐だ。
ネイホフの冒険者ギルドギルドマスターのヨーランさんは仙人みたいな見た目の爺さんだ。
ヨーランさんに明日西の森に出かけることを伝え、ついでに一軒家を借りたい旨を相談したら商人ギルドへの紹介状を書いてくれたよ。
「そう言えば同行しているお嬢さんのことも話に聞いておったんじゃが、今は外に待たせておるのかのう?」
「え?」
じゃあ俺たちはこれで……と出て行こうとしたらヨーランさんがそんなことを言うもんだから、少しびっくりしちまった。
『え? わ、わたし……?』
もちろんハナちゃん本人もびっくりしてる。
実は見えないだけでこの場にいます。
今日もステルスハナちゃんだ。
と言うのも、ドランではハナちゃんが話せない理由をサイレントバットのせいにしたんだが、ドランから出発してもう6日。
どんなに効き目に個人差があってももし「沈黙状態解除の薬」を飲んでたら話せるようになってる頃合らしい。
もちろん飲んでもないし話せるようにもなってません。
で、ハナちゃんが俺たちの旅に着いてくるってなってから「また」サイレントバットに「うっかり」やられて沈黙状態になるってのは大分無理があるんだよ。
だってパーティーメンバーに仮にも伝説の魔獣さんとかいるし……。
え、フェンリルがいたのにサイレントバットにやられることある? ってなっちゃうでしょ。
他にいい感じの捏造設定が考えつくまで、こういう話し合いの場では引き続きステルスを使っていく方針です。 今みたいに話が振られないとも限らないからね。
街中では程々に姿を出していく予定だよ。じゃないとあの子どこ行ったの? ってそれはそれで変だからな。
それにしてもウゴールさん、ハナちゃんのことも話してたのか。
しばらく一緒に旅をするとは言ったから一応伝えてくれた感じかな?
「はい、彼女は冒険者ではありませんので」
俺はとりあえず当たり障りのない返答をする。
「そうか……うむむむ……」
「あ、あの何か……?」
「いや何、ちょっとの」
『……?』
何その反応。も、もしかしてギルドマスターなんだし挨拶しに来ないとダメだったとか?
そ、それは困る、ハナちゃんの評判に関わるぞ。
どうしようか考えてたらちょんちょんとステルスハナちゃんの蔓に引っ張られた。
『向田さん向田さん』
『どしたのハナちゃん』
『もしかしたら、アロマテラピーサシェのことが聞きたいのかもしれません。どうにもお腰が辛そうですし……』
な、なるほど。確かにトントン腰を叩いてる。
そういや信頼出来る人に限ってお勧めしていくってウゴールさんも言ってくれてたな。早速宣伝してくれたのか?
アロマテラピーサシェの話も伝わってたらそりゃ話も聞きたくなるし、なんなら現物も欲しくなるよね。
だって朝までグッスリ快眠の上に肩凝りや腰痛にも効き目抜群なんだよ? お元気そうだが結構なご高齢に見えるし、きっと腰以外にもあちこち痛むところがあるだろう。
話だけ聞きたくても当のハナちゃんはいないし、もし欲しかったとしても自分からは言い出せないよなぁ。ただでさえ滞ってる案件を俺たちに頼んでるところなのにさ。
うーん。
念話で二言三言交わした結果、ヨーランさんにもアロマテラピーサシェを渡すことになりました。ハナちゃんもヨーランさんのこと心配してたからね。
それにまだ俺とウゴールさんしか使ってないから、あともう何人かに試作品として渡して使用感や意見を聞かせて貰うのもいいよねって話がまとまったよ。
ハナちゃんがアイテムボックスからこっそり出してくれたのを俺が受け取って、と。
「……あの、ヨーランさん。実は彼女から預かって来た贈り物がございまして、よろしければお受け取り下さい」
「おお、これが噂の腰痛にも効く香り袋!! ……ゴホン、す、すまんのう。儂もまだまだ現役のつもりじゃが、寄る年波には勝てないんじゃ……」
やっぱりウゴールさんから聞いてたんだな。いやいや、そのお歳でギルドマスターやってる時点ですごいことだよ本当に。
安心してくれ爺さん、効果は保証するぜ。
俺はアロマテラピーサシェの使い方、使用期限は大体香りが続く一年間のこと、まだ試作段階なので何か意見があれば教えて欲しいこと、使ってみて良かったら必要そうな人にそれとなく宣伝しておいて欲しいことを伝えた。
最後のやつはハナちゃんに頼まれてないけど、折角ギルドのお偉いさんに使って貰えるんならお願いしとかない手はないぜ。フフフ。
馬鹿売れするって確信はあるが、一人一人に行き渡る分って結局は一つなんだよな。
どういうことかって自分の手元に置いておく分を買い溜めしたとしても意味がないってこと。どうにか香りを長持ちさせようとしても大体は同時期に効果は切れちゃうからさ。
だから今から一人でも多く顧客を確保しておくためにも、地道な宣伝活動は大事だと思うんだよねぇ。
副ギルドマスターのウゴールさんに引き続きギルドマスターのヨーランさんの紹介なら安心出来るし。
ヨーランさんはもちろんとばかりに快諾してくれたよ。
「フォッ、フォッ、フォッ。それくらいおやすいご用じゃ。くれぐれもハナさんとやらによろしくお伝えくだされ」
『いえいえいえ、きょ、恐縮です……! ……お体の調子が少しでもよくなりますように』
「……はい、もちろんです」
今のはヨーランさんにも聞かせてやりたかったぜ。
ハナちゃんの言葉は俺だけに届く。
話せるようになったらハナちゃんの交流も広がるだろうになぁ。
俺は心底残念に思いながら冒険者ギルドを後にした。
さて、借りに行くぜ一軒家。