第五十四話 さすがAランク冒険者?

 まず向かうのはイーダ商会というネイホフ随一の目利きと品揃えを誇る店らしい。
 地元民の5人全員が言うんだから間違いなさそうだな。
 俺とハナちゃんと嵐の使者ストームブリンガーの7人でぞろぞろ歩いて更にフェルとドラちゃんが続くもんだから周りから遠巻きに見られてるが、ま、まあ気にしないことにする。
 逆にリーダーのアントンはAランクの冒険者とその従魔を案内してるって実感が湧くって誇らしげだった。
「やっぱり存在感からして違うっていうかさ」
「わかる、一目置かれてるーって感じがするよな! さっすがAランク!」
「僕たちもコツコツ依頼をこなしてランクを上げていかなくちゃね」
「ハハハ、が、頑張ってな」
「「「はいっ」」」
 アントンとフィリップとパウルがまたキラキラした目で俺を見てるよ。うう、後ろめたい。俺自身はそんな大したもんじゃないのになぁ。
 歩いているうちにいつの間にか男性陣と女性陣に分かれてたみたいで、ハナちゃんは道行く店をブリジッタとリヴィアに案内してもらって楽しそうだ。
「あの角のお店は陶器の破片を使ってアクセサリーを作ってるのよ」
「!!(こくこく)」
「時間があったら寄ってみましょうか」
 女の子同士で会話が弾んでるね。いやハナちゃん、喋ってはないんだけどさ。最初に説明しといたおかげもあって上手いことコミュニケーションが取れてるっぼい。よかったよかった。
 しばらく雑談しながら歩いてると、目的地であるイーダ商会に到着した。
「じゃあ行ってくるから」
『いってきます』
『うむ』
『昼寝でもするかー』
 中には割れ物しかないことがわかってるからフェルとドラちゃんは外で待機だ。ドラちゃんのサイズなら飛ばなければ問題なさそうでも、我慢させたり退屈させたりするのは悪いしね。焼き物にも興味ゼロだし。
 ちなみにスイは鞄の中でもう寝てます。こっちも興味ゼロ。わくわくして興味津々なのはハナちゃんだけだよ。あと俺。
 店に入るとすぐにアントンの仲介の元、商会の主のイーダさんを紹介してもらえた。
 この後アントンとブリジッタのところの工房に行くつもりだから、それ以外のおすすめを見せてもらうことになった。
 みんながネイホフ一って言うだけあって、所狭しと色んな種類の焼き物が置いてある。料亭で使われてても可笑しくないような上品な焼き物から、レストラン然とした真っ白な皿までとジャンルも幅広い。
 ちょっとした展覧会気分で見応え抜群だわ。
「これ、フェルたちに良さそうじゃない?」
『いいですね! 色味も渋くて素敵です』
 購入品に目星をつけてると、イーダさんが「よければお手に取ってじっくりご覧下さい」と言ってくれた。
『持ってみてもいいですか?』
「どうぞどうぞ」
 ハナちゃんがおそるおそる慎重に深皿を持つ。
 お、結構重そう。蔓は力持ちだけど、ハナちゃんの腕力自体は人並みなんだよな。
『ず、ずっしり重たいです……』
「うん、フェルたちすぐがっつくからさ、適度に重さがある方が安定するかなって」
『なるほど! あ、この色なんかスイちゃんに良さそうですよ』
「そっか、色は別々の方が分かりやすくていいかも。どの色にするかみんなに聞きたいところだけど……」
『私、外で待ってるフェル様とドラくんに聞いてきましょうか?』
「いや大丈夫、ありがとね。スイは寝てるし勝手に決めちまおう」
『ふふ、じゃあ責任重大ですね』
「はは、確かに」
 こうして俺とハナちゃんは色んな焼き物を吟味していった。
 久々のネットショッピングじゃない買い物、楽しいな。直接実物を見れるのはやっぱり違うわ。
 セットで売ってるマグカップやカップはハナちゃんも使うだろうからって一緒にデザインを見てもらったけど、大体俺の趣味になっちまったな。
 でも花模様とかはハナちゃんぽくてよくない?
 結局イーダ商会ではフェルたち用に深皿を3枚、マグカップとコップの5個セット、カップ&ソーサーの5個セットを購入。
 なかなかいいお値段だったが、いい焼き物にはそれ相応のお値段だからって納得して買ったぜ。
 ……あれ? な、なんかまた5人の目がキラキラしてるような……
 まとめて買ったから「さすがAランク」って見られてんのかな。こ、こそばゆい。
「ムコーダさん……読唇術が使えるなんてすごいですね!」
「へ?」
 ど、読唇術ってなんのことっ?


~side 嵐の使者ストームブリンガー
「……なあ、ハナさんって一言も喋ってないよな?」(アントン)
「そのはずだけど……完璧に会話が成立してる……」(パウル)
「表情が読みやすいにしたってすごすぎない……?」(ブリジッタ)
「もしかして……唇の動きを呼んでるとか……!?」(リヴィア)
「や、やっぱりAランク冒険者ってすげぇ……!!」(フィリップ)
 こっそり囁き合う少年少女たちは、こうして更に尊敬を深めたのであった……。

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