第六十四話 これまでの振り返り
今は帰宅して夕食後にデザートを振舞って、まったりコーヒーブレイク……と落ち着いたところ。この豪邸で過ごすのも最終日だ。
で、次の街に行く前に改めてハナちゃんの現状を整理しようってことになった。
色々でっち上げて口裏を合わせてる件もあるし、定期的に確認した方がお互い安心だと思ってね。
ちなみにオーク集落殲滅の報酬金はもうハナちゃんに渡してあるよ。
報酬金の金貨180枚、内3分の1である金貨60枚を
なんで2割になったかっていうと、オークの総数は203匹。俺は2匹しか倒してないです。
体感になってしまうがハナちゃん曰く40匹弱は倒したらしい。だから全体の2割倒したってことで、そのまま報酬も2割にさせてもらった。
それでも多いって言われたけどね。すまん、実際半分返される想定でちょっと多めで計算しました。
あと『ごめんなさい、ちゃんと数えておけばよかった……!』って謝られたけど、毎回戦闘中に数えて覚えておくのも大変だしそこまでしなくて大丈夫って伝えておいた。
今後もざっくり計算していきます。
さて、ハナちゃんの現状は。
転生して生後約三週間。種族は一応アルラウネ。職業は……だ、ダッ○ワイフ。
俺と表向きの関係は「遠縁の親戚」。実際はもちろん「主人と従魔」。
商人になるため故郷から出てきたところ、ドランの街で俺と偶然再開し、一緒に旅をすることになった……という設定で、商人ギルド登録済。アロマテラピーの効果を付与したサシェやポプリをゆくゆくは販売予定。
まだ念話以外では喋れない・かつスキルの暴発が懸念され、街中では固有スキル『ステルス』を使用……していたが、状況と慣れに応じて使用頻度を下げつつある。
喋れない理由は当初「サイレントバットからの攻撃」「沈黙の状態異常・一時的なもの」と捏造。
しかしそう何度も状態異常にかかるのは無理があるので、現在は「ちょっと今は喋れないんですが直に治りますんでお気になさらず」程度に理由を曖昧にし、さらっと流す作戦に移行中。
当面の大きな目標は「肉声で喋れるようになる」こと。
具体案はフェル曰く、『ダンジョンに行けばいいのだ』……。
実戦を重ね余計な思考を削ぎ落とし、アルラウネとして体を使い、自覚と理解を深めろ、だそう。
ちなみに、レベルアップに伴い進化する可能性もある。
「……こんなところかな?」
『はい、ばっちりです!』
ばっちり頂きました。
で、帰り道でも話してたベルレアンでの過ごし方なんだが、ステルスは控え目の方向で決まった。
もちろん若干の不安要素はあるよ。この間みたいに急に花が咲いちゃった例もあるし、ハナちゃんはまだアルラウネの体をちゃんと制御出来てないからね。
ハナちゃんの思考や感情に引っ張られて突然街中で新しいスキルが生まれる可能性も全然あるし、それがどんなかたちで発動するか不明なのもちょっと怖いとこ。
『でも、ステルスに慣れすぎちゃったら後で大変ですよね……』
そうなんだよねえ。
……前に宿屋の中庭でステルスハナちゃんが俺の前でどんどんぬ、脱いでって服が突然出現したこともあったし。
ステルスが当たり前すぎてそういう行動を取ってったらハナちゃんも困るし俺も困ります。はい。
それに、やっぱり最初から姿が出せないと交流のコの字もないもんな。実際に
ハナちゃん自身も楽しそうだったし、少しずつ人前に出るのも慣れていった方がいいよな。
だからスキル暴発を恐れて最初っから姿を消してるよりも、暴発時なんとか誤魔化すためにステルスを使った方がいいんじゃないか? って結論になった。
まだ喋れるようになってないから徐々にだけどね。
もちろんしっかりフォローする心づもりでいるぞ。
「ってことで、次の街からはハナちゃんも一緒に依頼を受けに行くからな」
『ふーん、そうなのか。そういや姿消してたな』
『ハナちゃんも一緒にいーっぱい倒そうね~』
『ハナも戦えると周りに知らしめればよいのであろう? 我に任せよ』
皆にも一応伝えておいた。フェルのその思わせぶりな発言はなんなの? 嫌な予感しかしないんですが。
ま、まあとにかく、これはハナちゃんもパーティーにちゃんと参加してますよ、戦えますよ~アピールに繋がるので、なるべく依頼は一緒に受けていく予定。
非戦闘員と見なされて危ない目に合ったら嫌だからな。
振り返りはこんなとこか。
……あ。
あと、は、ハナちゃんの気持ち、とか。
こ、これはハナちゃんには言えないけどっ。
どうもハナちゃんが……お、俺のことを好きっぽい件について。
………………………………保留!
思考停止してるわけじゃなくて俺からどうこう出来るものでもないからどうしようもないっていうか別に告白されたわけでもないしただ気付かざるを得ないくらいには浴びてしまったっていうかどんだけ俺のこと好きなのとは正直思ったりなんかもして……
はい。
保留です。
俺は様々な感情と共にコーヒーの最後の一口を飲み干した。