第六十六話 どういう意味?

 ぶ、ブローチは昼飯の時になんとか渡せました。何故か無駄に緊張したがなんとかなった。喜んでもらえてよかったぜ。
 まあその、しば~~らくずっとハナちゃんの花が咲き続けるという事態にはなりましたが……。
 よ、喜んでもらえるとは思ってたけどそんなにっ? 嬉しいやら照れくさいやらで俺もしば~~らくずっと胸のあたりがソワソワしてましたはい。
 今は暗くなってきたし(流石に花も咲き止みました)この辺で休もうかって寝る準備をしてるところ。
『ハナちゃんと一緒に寝るの久しぶりだねー』
『そうだね、一週間ぶりだねー』
『なんで一緒に寝てなかったのー?』
『えっ』「えっ」
 いきなりスイがぶち込んできた。
 今更それ質問してくる??
 い、いやでも確かに豪邸滞在中だと疑問に思うタイミングってなかったのかも。
 基本的にスイもドラちゃんも風呂から上がったらすぐ寝ちまうんだよ。健康優良児。
 風呂に入る順番は俺とスイとドラちゃん→ハナちゃんで完全固定。
 万が一にもスイから『皆で一緒に入ろ~』なんてもう二度と言われないよう「俺達には気持ちいい温度でもハナちゃんの体には熱すぎちゃうから別々で入るんだよ」ってきちんと言い聞かせましたとも。ええ。
 で、ハナちゃんが風呂から上がる頃にはスイはぐっすりスヤスヤなわけで……
『なんでー? なんで一緒に寝てなかったのー?』
『えっと……あの……その……』
 絶対に俺と同じことを懸念しているであろうハナちゃんがしどろもどろになっている。
 ど、どうする、ここで上手いこと説明しておかないと次の街でも『皆で一緒に寝ようね~』とか言われかねない。
 流石に一つのベッドで寝るのはアウトだろーーーーっっ。
 ……まあ正直な話一つのベッドで寝るのはそりゃアウトだが、真横に布団を敷いて寝るのもアウトでは? と思わなくもないんですが。
 ふ、布団は別々だし、個別に結界張って貰えるにしたって野外だから同じ空間の方が安全だし、布団は別々だし……
 俺が誰に伝えるでもない言い訳をぐるぐる考えていると、
『……あっ! そう!! あのね、お風呂の時間が別々になったでしょ?』
 どうやらハナちゃんが閃いたらしい。
『うん、ハナちゃんあつーいの苦手なんでしょー』
『そうなの。別々だと、お風呂から出てくる時間も違うよね』
『? うんー』
『わたしがお風呂から出た時、皆寝てるかもしれないでしょ? えと、その、一緒のお部屋だと、お、起こしたらやだなぁ~って思って……ねっ?』
 いいぞハナちゃん、途中から自信なさげにどんどん声が小さくなってったけどなかなか良い感じの言い訳です。
「そ、そうそう。ほ、ほらハナちゃんは風呂上りに髪の毛乾かしたりって色々あるからな。だからまた家を借りた時は別の部屋で寝るんだよ」
『そーなのー?』
『きょ、今日みたいにお外の時はこれからも一緒だからね、よろしくねスイちゃん』
『わかったー!』
(やりました向田さん!)
(でかしたハナちゃん!!)
 力強く頷いてきたハナちゃんに俺も力強く頷き返した。
 ふう、なんとかなったぜ……。
『人間てめんどくせーな』
『全くだ』
 なんとでも言うがいい。
 スイに男女の違いについて説明するのはまだ早い。
 その後は普通に寝る準備をした。
 土魔法で壁を立てて寝床を作って、いつものようにビニールシートと布団を敷いて、っと。
 これでよし。準備完了。
 ……準備完了ってことは後はもう寝るだけってことでして……
『……えと、お、お邪魔します』
『は、はいどうぞ……』
 横になると、遠慮がちにハナちゃんの蔓の一本が俺の腕にするすると巻き付いてくる。
 ハナちゃんが寝てる間に蔓が暴走しないようあらかじめ繋いでおこうっていうアレだ。
 コレも一週間ぶりってことになる。
『おやすみなさい、向田さん。また明日』
「おやすみハナちゃん。……また明日」
 ふふっとハナちゃんが笑う気配がして、辺りはしんと静かになる。フェルとスイとドラちゃんはもう寝てたし、直に隣からも安らかな寝息が聞こえてきた。
 俺はすっと目を閉じて思い出す。
 そう、ハナちゃんが転生してすぐの頃、ドランの街の宿屋で言われたあの言葉。
 俺がハナちゃんの寝てる間に蔓が勝手に動いたのはダッチワ〇フとして無意識にでも責任を取ろうとしてるんじゃないか? そんなことは気にしなくて本当に大丈夫だからって言った時のあの言葉。
 職業は関係ないと思います、って言われた後のこの言葉。

 ――“私、ずっと向田さんに触りたかったんです。”

 ぐわあああああああっっ。
 ね、寝れねぇぇぇぇっっ。
 いやあの。この間発覚した事実としてハナちゃんはお、俺のことがす、好きらしい。はい。それらを踏まえるとあんな発言やこんな発言からもしかしてハナちゃんて俺のこと割と……割と初めからす、好きなような気がするんだが。
 つ、つまりアレは……え? どういう意味……?
 どういう…………、
 …………そういう…………?
 …………。
 …………。
 …………。
 …………。
 いかん。
 無理。
 俺はアイテムボックスからハナちゃん特製アロマテラピーサシェを取り出してぎゅっと胸に抱いた。
 いや~~心がリラックスして安眠できる~~~~~スヤァ。

 翌朝しっかりエロい夢を見ましたと。ちくしょう。俺の馬鹿。
 朝飯の時ハナちゃんの顔を見るのがそりゃまあ当然気まずかったんだが、ハナちゃんも何故か気まずそうにしてた気がする。
 ってなんか前にも同じことがあったような。
【※詳しくは第四十二話参照】
 ……まさかハナちゃんも同じような夢を見てたり……?
 そ…………………………(私、ずっと向田さんに触りたかったんです)…………………………んなこと、ない、よな……?
 …………。
 …………。
 …………。
 …………。
 ないって言ってくれぇぇぇっ。絶対聞けないけどっっ。

<< 前へ 次へ >> 目次