第六十七話 いざイカ焼き
ネイホフからベルレアンを目指して7日目の昼。俺たちはようやく青い水平線を拝むことが出来た。
潮の香り、海鳥の鳴き声、波の音……ひゃっほう、海だぜ。久しぶりだとやっぱりちょっとテンション上がるよな。
『おおおおーーっ! すげー! 水の向こうが見えねえ!!』
『お水がいっぱいだ~~!』
『わーーーっっ、綺麗……!! い、いつぶりだろう海……!?』
まあ、俺より皆の方がテンション高いんですが。
楽しそうでなによりです。
目を輝かせて嬉しそうにはしゃいでるハナちゃんはもちろんステルス未使用。
この前決めた通り、なるべく依頼は一緒に受ける・ハナちゃんも戦えますアピールを実行していくからな。
『我は早く狩りがしたい。さっさと依頼とやらを受けに行くのだ』
フェルさん、ぐいぐい鼻先で押すの止めてくれませんかね。
急かさなくて各街で滞ってる高ランクの依頼を受けるって約束だし、この後すぐ行きますって。だからこそ入国から今までハナちゃんがステルス使ってないんだぞ。
旅の間もずっと進むだけじゃ暇だなんてブツクサ言ってたからな〜。
皆が強いおかげで道中魔物はほとんど見なかったし襲われなかったのにそれがご不満だそうで。
なんならはぐれトロール見つけて『先に我が見つけたのだぞ!』『こういうのは早い者勝ちなんだよ』とかってフェルとドラちゃんがケンカし出すくらいだったからな。
ハナちゃんが慌てて『き、きっと海に大きくて狩り応えのある魔物がいますよ!』って取りなそうとしてたよ。
ちなみにスイは寝てました。
というわけで、冒険者ギルドに行ってフェルたちの運動不足を解消してくれる依頼があるか聞かなくちゃな。
「おーい皆ー、フェルおじちゃんがもう待てないってさー」
『おいっ! だからお主にその呼び名は許しておらんぞ!』
『あー悪い悪いフェルおじちゃん、つい夢中になっちまってよ』
『ごめんねーフェルおじちゃーん』
『ほらハナも呼んでやれよ、フェルおじちゃんて』
『そ、そんな滅相もな、っんふふ』
『ぐぬぬぬぬ。わ、笑うでない!!』
うむ、俺の従魔たちが仲良し。
冒険者ギルドに着くとヨーランさん(ネイホフのギルドマスター)から既に連絡が来てたそうで、俺たちは早速ギルドマスターの部屋に案内された。
ベルレアンの街の冒険者ギルドはけっこうデカかったし、ギルドマスターのマルクスさんはかなりデカい。190超えてるだろコレ。眼帯してて筋肉ムキムキ、海の男どころか海賊みたいなおっさんだった。ギルドマスターも各街ごとに個性があるよな。
「で、そっちがお前さんの
話に聞いていたらしい『フェンリル』と『ピクシードラゴン』と『特殊個体のスライム』を確認した後にマルクスさんが言う。
つ、ツレ? ハナちゃんのこと?
「ええと、はい。ハナと言います」
「(ぺこり)」
ハナちゃんは長身の海賊面に臆することなく普通に挨拶した。ど、度胸ある~。俺はちょっとビビったのに……
「彼女は私と同郷でして、遠いしんせ――」
「ああ、いいってそういうのはよ。お前さんの
きちんと表向きの俺とハナちゃんについて紹介しようとしたら笑い飛ばされた。
ヨーランさん、そこら辺も伝えてくれたんだな。しかし言い方になんか含みがあるような……き、気のせいだよな?
【※気のせいではなく、いつの間にか外堀を埋めています】
「おっと、挨拶はこれくらいにしておかねぇとな。本題に入らせてもらうぞ」
マルクスさんは真面目な顔で話し始めた。
元々冒険者の数はまあまあ揃っていたので滞っている依頼はなかったらしいが、なんと3日前にクラーケンが出たとのこと。
『ふむ、クラーケンか』
流石耳ざといねフェルさんや。
『クラーケン……、ハッ――――つまり、イカ焼き……!?』
独り言が
幸いまだ人的被害は出ていないものの、船は出せないわ漁獲量は落ちるわで港は大打撃を受けているそうだ。
依頼を受けない理由もないので受けました、クラーケン討伐。
フェルが言うには美味いらしいし、ハナちゃんもイカ焼き楽しみにしてるし。フフ。
話がついた後はマルクスさんに追加で「ダンジョン産の物が残ってれば買取させてもらえねぇか?」ってお願いされた。ダンジョン踏破のことも知られてたわ。
これからの予定としては、
・まず家を借りる(紹介状書いてもらった)
・ダンジョン産の品物の確認(元のリストがあるからまだ楽)
・明日クラーケン討伐(今日じゃないのかってフェルに言われた、明日です)
・一段落したら海鮮BBQ(炭火で海鮮!)
ってとこかな。
ん? なんか忘れてるような……?
『今度はどんなお家か楽しみですね!』
「はは、そうだね。オーシャンビューとか?」
『お、オーシャンビュー……!?』
ま、いっか。
今日もハナちゃんが楽しそうで何よりってね。
……なのでこの時の俺は神様ズへの貢ぎ物なんて思い出せるわけがなかったのでした。