第七十七話 海鮮BBQとタコのアヒージョ

 今日は念願の海鮮BBQをやるぞ! ということで朝は軽めにファミレス風モーニングだ。
 半分に切ったトースト、ミニオムレツ、サラダ、こんがり焼いたベーコンを全部大きめの白いお皿に盛り付ける。フフ、このために個包装のバターを買ったった。それっぽさ増し増しに俺とハナちゃんは朝からちょっとはしゃいだ。
『スープバー付きのところが多かった気がします……?』
「あぁ、あの具をすくうのがちょっと難しいやつ」
『それですそれです』
 色んなファミレスを思い出しながらインスタントのコンソメスープをすする。もちろんそれっぽさ優先で白いスープマグに入れたぜ。
 本当は昨日買ったミニクラムで早速クラムチャウダーを作ろうと思ったんだが、たらふく海鮮を食べる前だと言うことに気付いて次の機会に回すことにした。
「電源の問題さえクリア出来てたら俺、あの業務用スープジャー買ってたかも」
『ネットスーパーに売ってます……?? 電気、ないですもんねぇ』
 流石にないか。保温出来るの便利だよな、あれ。
 そりゃアイテムボックスに入れておけば勝手に保温されるんだが、食べている間は出しっぱなしだし……と思ったところで俺は気付く。
「ま、まあ大体みんな熱いうちにおかわりで食べ尽くすんだけどさ」
『あはは、確かに!』
 朝からがっつり肉を食べてるフェルとスイとドラちゃんを見ながらハナちゃんが笑った。
『おかわりの話ー? あるじー、おかわりー』
『我もだ』
『俺もー』
「はいはい」
 和やかに朝食が終わったらひたすらBBQの準備だ。下処理はしっかりした方が美味いから手は抜かないぜ。
 そのまま焼くだけの物は食べやすいよう切ったり、エビなら背ワタを抜いたり、カニなら表面だけ殻を削いだり。ホイル焼きも各種用意。
 ハナちゃんも蔓と一緒に手伝ってくれたよ。主に野菜の下処理をお願いした。だってあの蔓、ピーラーも使えるんだぞ? すごすぎ。
 片方の蔓がピーラーを持ってもう片方がアスパラを持ち、固い皮を剝いていく。その間ハナちゃん自身は玉ねぎをカット、とか、並列処理もお手の物になってきたわ。
 また一段と器用に動くようになったし、もっと使いこなすためにこれからも色んな動作をした方がいいよな。
 そんなこんなで思ってたより早く準備が終わって、後は焼き上がるのは待つだけ。
『まだか』
「まだだって」
『まだー?』
「まだー」
『まだかよ』
「まだです」
『ふふふ』
 毎秒聞かないと気が済まないんか?? 焼けていく香ばしい匂いが辺りに漂ってるから気持ちはわかるけどね。
 お、そうだ。作るなら今がちょうどいいな。
「ハナちゃんハナちゃん」
『どうしました向田さん』
「どうせならハナちゃんが獲ってきたタコも食べたくない?」
『! 食べたいです!! でもタコってあんまりBBQのイメージないですけれど……?』
「フフフフ、まあ見てなって」
『はい!!(向田さんが楽しそう~!!)』
 借家のキッチンにスキレットがあったから思いついたんだよね。
 材料は下茹でしたキングジャイアントタッコ、カマンベールチーズ、ミニトマト、ブロッコリー、ニンニク、鷹の爪、オリーブオイル。
『ハッ……それはまさか……!?』
「フフ、そのまさかです」
 そしてこの、安心安定のアヒージョの素を使ってアヒージョを作っていくぞ。
 アヒージョの素を使うならニンニクはなくてもいいんだけど、ここは好みだな。
 具材は全部食べやすい大きさに切ってと。ニンニクは皮を剥いて包丁の背で潰す。
 スキレットにオリーブオイルとアヒージョの素を入れてよく混ぜ、鷹の爪とニンニクを入れたら火にかける。ニンニクの香りが立ってきたら切った具材を全部ぶち込んで火が通ったら完成だ。
 油が冷たいうちから全部入れてもいいんだが、今回は一応正攻法で。アヒージョはどう作ったって美味いし、何入れたって美味いからな。
 ちゃちゃっとアヒージョを作っている間、バーベキューコンロに並べていた貝がいくつか開き始めてる。
 うむ、そろそろ食べ頃だな。
『わああああも、もう何から食べたらいいか……! 全部おいしい……!!』
 食べる前から『全部おいしい』頂きました。いやもうホント、全部お食べ。
 なんならオリーブオイルと具材をつぎ足しながら色々作っていくつもりだし。そのうち具材の水分で味がぼやけてきたら塩やアヒージョの素をちょい足しする予定。
「エビもホタテも絶対美味いし、マッシュルームとかナスとか追加してもいいよね」
『そ……そんな夢のようなことが……!?!?』
「海鮮とニンニクのうま味がたっぷりのオイルにバケットをひたして食っても間違いないし、〆にオイルパスタっていう選択肢も……」
『……!!!』
 ハナちゃんは電撃を受けたように硬直した……と思ったら、やがてゆっくりと胸の前で祈りを捧げるかのように手を組んだ。
『胃袋が足りません――――』
「フッフフ……い、いっぱいお食べ……?」
『はい――――』
 どうすんのそれ、万が一祈り届いて胃袋増えちゃったら。とか思ったけどものすごく真面目な顔で海鮮BBQと真剣に向き合うハナちゃんには言えなかったし、俺は吹き出すを堪えるので精一杯でした。
「ビール? ワイン? あ、あと日本酒で甲羅酒ってのも」
『ええっ!? ま、待ってください向田さん、今ちょっと考えますんでっ』
 慌てふためくハナちゃんにいよいよ笑いながら、ネットスーパーを開いてパッと注文する。
「いやいやハナちゃん、答えは決まってるって」
『……! ぜ、全部……!?』
 はい、全部です。
 ハナちゃんは山盛りの海鮮BBQとタコのアヒージョ、ビールと白ワインと日本酒を前にして目をキラキラさせながら、ぎこちなく俺の方を振り返る。
 この顔は『こんな幸せなことが許されていいんでしょうか……?』ってところか、相変わらずわかりやすい。
『こんな幸せなことが許されていいんでしょうか……?』
 一字一句合ってることある??
「いいに決まってるでしょ、乾杯しよっか?」
『……はい!!』
 選択肢なんていくらあったっていいし、選べるんなら全部選んだっていいんだよってこと、ハナちゃんにはもっと知ってもらわないとね。
 みんなでたらふく食べて飲んで、念願の海鮮BBQは大成功だった。  

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