第八十一話 どう考えても無理ゲー

 無事にハナちゃんへプレゼント出来た後、ゆっくり海の街を観光しながら借家に戻った。
 プレゼントに選ばれた物はフェルとドラちゃんに似せた貝殻細工とスイそっくりの魔石のシーグラスだ。
 出店の婆さん、すごかったな〜。ハナちゃんがちょっと離れた間に「そんなに従魔と仲が良いなら……」ってちょちょいと手を加えて、ただの狼と竜の置き物があっと言う間にフェルとドラちゃんになったからな。模様とか目の色とかポーズとか少し変えただけなのに、職人ってすごいぜ。
 ハナちゃんもすごく喜んでくれたから、詰め替え作業のお礼とこの街の良い土産になって良かったわ。
 帰り道、ハナちゃんが嬉しそうにフェルとドラちゃんにどれだけ似てるか力説したもんだから、早速リビングの目立つところに飾ることになった。
『おー、これ俺だよな! すげえ!!』
『フンス。……まあまあだな』
 フェルさんや、尻尾が揺れてますよ。
 好評で何より。
『これはねー、スイが見つけたのーハナちゃんのお花と同じ色ー』
『えへへ、ありがとうねスイちゃん』
『うふふー、ハナちゃんもスイと同じ色見つけてくれてありがとー』
 うむ、今日も可愛い×可愛いは超可愛いだな。
 あの婆さん、魔石のシーグラスをいくつもオマケに付けてくれたんだよねぇ。スイとハナちゃんがわいわい選んでたっけ。
「おっ。スイ、ハナちゃんの花の数と同じで2つ見つけたんだ。すごいなー」
『うふふー、スイ、すごいでしょー』
 褒められてぴょんぴょん飛び跳ねるスイたんは可愛いねえ。
 いやホント、かなりの量がざらざらーっと雑多に入った箱だったから同じような色を探し出すのはかなり大変だったと思う。
 まあ、俺はそれも込みで楽しそうに選んでたスイとハナちゃんをほっこり眺めてたけどな!
『ハナちゃん、あるじのはー? あるじのも並べてー』
『え゛っ?!』
 え、俺のもあるの??
『……………………こちらです……』
『わーい、みんな一緒だねー』
 全部並べ終わった貝殻細工と魔石のシーグラスを見て、スイが嬉しそうにまた跳ねた。
 真ん中にデンと飾られてるのがやや大きめのフェル、その横にドラちゃんの貝殻細工。魔石のシーグラスは大中小と置かれていて、まんまるで形も色もそっくりなスイの水色、ハナちゃんの花のピンクが2つ……と、緑色?
 あー、確かに俺がよく着てる服の色に似てるわ! 見た目は表面が曇り硝子みたいにくすんでて、ちょっとデコボコして平べったくて、なんの変哲もないTHE・シーグラスって感じ。普通~。
 婆さん、オマケでいっぱい付けてくれたから多分その内の1個だろうな。
「はは、これ見て俺のだって思ったのかスイ~」
『そうだよー、ハナちゃんずーっと探してたもんねー』
「えっ?」
 適当に選んだやつの1個じゃないのっ?
 スイを抱っこしてぽよぽよ撫でたらそんなことを言われて、俺は思わずハナちゃんの方を見た。
『……ハイ……』 
 も、ものすごく照れてらっしゃるっっ。
 いや顔真っ赤なんですけどハナちゃん。
『……す、スイちゃん見てたの……?』
『見てたよー、これあるじのでしょー?』
『うん……そう……そうだよ……さすがスイちゃんだね……』
 ぴょんと俺の腕の中からジャンプして移動したスイをぎゅっと抱きしめてハナちゃんがそんなことを言う。
 え? つまり……?
 スイにバレてるとは知らずに俺っぽいシーグラスを一生懸命探してくれてたってこと?
 そ……それはもう俺のこと好きってことでよくない??
 いかん、うっかり自分の都合の良い方に考えちまう。でもこれは仕方なくない?
 流石に……流石に脈ありじゃないかっ?
『いえっ、あのっ、その……ほら! ど、どうせならスイちゃんも言ったようにみんな一緒に並べたくて……!』
「そ、そ、そうだね、ありがとうハナちゃん!!」
 慌ててお礼を言いながら俺も顔が熱かった。
 ハナちゃんはスイにバレバレだったのと、今俺にバレたのがよっぽど恥ずかしいのか、抱っこしたスイをもちもちコネコネしている。
「……えっと、夕飯にはまだ早いし、お茶でも淹れよっか」
『そ、そうですねっ!! 私、お湯沸かしてきます!!』
 話題を変えるための提案に、まるで天の助けとでも言うようにぱあっと顔を輝かせてハナちゃんはキッチンに駆けていった。
 本来なら蔓を伸ばしたらどこからでもお茶の用意が出来るのに、そこまで頭が回ってないか、とにかくこの場から逃げたかったか、はたまたその両方か。どっちにしろハナちゃんが可愛いことだけはわかる。
 向田剛志27歳、春、近いかもしれん。
 ……まあ、無事に春を迎えるためにはいくつかの難題をクリアしないといけないんですけど。

①従魔契約の解除方法を見つける。
②従魔契約の解除後も、ハナちゃんがスイとドラちゃんと話せる・もしくは意思疎通が出来るようにする。
③『主人』と『従魔』という関係を解消するために従魔契約を解除する。
④上記がクリア出来れば告白する。

 何度考えても無理ゲーなんですが。
 まず①から難しすぎる。解除どころか契約の仕方さえ全部曖昧だったよ、従魔契約。
 ただ、これはハナちゃんを転生させてくれた創造神様とやらに聞けばなんとかなるんじゃないかって期待してる。
 まあその創造神様とどうやってコンタクトを取ればいいのかは現状不明だけどな。
 解除方法が見つかったら②に進めるんだが、これも難しい……っていうか可能なのか?? でも絶対条件なんだよなあ。
 だって従魔契約の力でハナちゃんがスイやドラちゃんと意思疎通が出来ている現状が維持出来なきゃ、誰も納得しないと思うんだよね。俺もしません。元から人語を話せるフェルはさておき、スイとドラちゃんと話せなくなることをハナちゃんが良しとするわけがないし、逆もまたしかりだろ。
 で、この難問を乗り越えたらやっと③の契約解除にこぎ着ける。
 ここではハナちゃんにも「従魔契約を解除したいんだけど……」ってなるべく誤解されないようにどうにか説明しなくちゃいけない。
 万が一でもハナちゃんに非があるなんて勘違いされたくないし、まさか「ちゃんと対等な関係になってから告白したいんで従魔契約を解除したいです」とは言えないでしょっ。
 これらの①②③をクリアしてようやく告白までたどり着けるってわけだ。

 ……。
 ……。
 ……無理ゲーじゃね?

 思考が一つの結論に達したちょうどその時、ハナちゃん(と一緒に連れられて行ったスイ)がキッチンから帰ってきた。
『お待たせしました、お茶でーす』
『で~す』
「ありがと。折角だしおやつにするか」
『おやつ~!』
『プリンか!?』
『ふむ、何にするか』
 ネットスーパーのウインドウを出すと自然と皆が周りに集まってくる。もちろんハナちゃんも。
『向田さんはなんの気分ですか?』
「そうだなあ、今日は……」
 ちょっとわくわくしながら覗き込んでくるハナちゃんは今日も楽しそうだし、うん、やっぱ好きだわ。
 ……はあ。頑張ろっと。無理ゲー攻略、やってやるぜ……!  

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