第八十四話 狩りたくなっちゃったかあ…

 結局ちょうどいい高ランクの討伐依頼はなかったが、サーベルタイガーの素材収集依頼があったんで、前にドラちゃんが獲ってきたやつを渡してサクッと達成した。やったぜ。
 ついでにオークをいくつか解体に出してから俺達は出発し、完全に人気のない所で一旦解散。
 皆は森へ狩りに、俺は独りで黙々と料理だ。トホホ。
 大体こういう時、つまり運動がてらの狩りがある時ってスイとハナちゃんは結構な確率で残ってくれるんだよ。スイは鞄で寝てたり俺の手伝いをしたがったり、ハナちゃんは俺の手伝い兼護衛として。
 で、さっきみたいにスイが暴れたい気分で狩りに行くことを決めたらハナちゃんはほぼ100%残ろうとしてくれるんだけど……。
『ハナちゃんも一緒に行こー』
『わ、私も?』
『ふむ。そう言えばこれまでスイとハナはあまり共に戦ったことがなかったな』
『あー確かに。ハナも体動かしといた方がいいんじゃねぇか?』
『わーい、ハナちゃんも一緒にビュッビュッてしようねー』
『わっ、フェル様ちょっ……待っ……む、向田さん私ちょっといってきますね~~!?』
 ってな感じで連れてかれちまった。しっかりフェルに結界張って貰ってるし完全防御のスキルもあるし心配はないです。ただちょっとハナちゃんとの憩いのひと時が少しだけ減っただけです。
 待てよ、逆に言えば結界やスキルがあってもいつも傍にいようとしてくれるってことだよな。ハナちゃんのことだから俺の『従魔』として頑張ろうとしてる部分もある、絶対ある。戦闘面でも役に立ちたがってるし。それはそれとしてこう、積極的に一緒にいたがってくれてる気もして……はい。
 いかん、あんまりにも自分に都合が良すぎてたまに不安になるわ。
 で、でもハナちゃんて俺のことまず間違いなく好きだし尊敬してくれてるんだよな……いや改めて言語化すると恥ずかしいなこれ。だってそこ疑ったら失礼なくらい毎日真っ直ぐ向けられてるんですよこちとら。例えば朝の挨拶だったり俺の飯の感想毎回言ってくれる時だったりふと目が合った瞬間だったり、そ、そんなにっ? ってくらい嬉しそうに幸せそうに笑ってくれるんだよ。
 万が一あれが演技だったら俺は……俺は……一生誰も信じられなくなるくらいには心が折れます。そんなこと出来るような子じゃないって知ってるけど。
 問題は疑いようもない『好き』を浴び続けると欲が出てくるってことでして……俺も一人の人間なので……。
 たったさっき「結婚はいいぞ~」なんて言われちまったばっかだし、やっぱ意識はする。婚期の話も聞かされたし……。
 そりゃあ諸々解決して告白して付き合って行く行くは……が一番なんだけどさ、それは俺にとっての一番だからなぁ。何より優先されて欲しいのはハナちゃんが第二の人生をのびのび楽しく過ごせること。
 ふう、現状維持現状維持。俺とハナちゃんは主人と従魔、遠縁の親戚設定。
 いつもの呪文を唱えつつ俺は手を動かし続けるのだった。
 ちなみに肉料理は作り終わったんで次は魚介。俺もレベルが上がったからかどんどん手際が良くなってる気がする。
 あ、レベルアップの恩恵を感じてるのが料理だけってどうなの? って思わなくもないから、俺も次のダンジョンではちょこっとだけ頑張るつもりだ。力も魔力も上がってるはずだし。
 さて、何作るかな。カキフライが美味かったから色々揚げておくか? 皆が帰ってくる前にまだまだ作って……あれ?
 皆が狩りに出発したのは昼前、今は多分太陽の位置と腹の減り具合からして昼飯時。
 昼飯を食いに戻って来ないってことはそれだけ夢中になってんのか?
「またとんでもないもの獲ってこなきゃいいけど……」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

『では狩るぞ』
『はーい』
『おう!』
『はいっ! ……はい?』
『偉そうに飛び回ってんなー。まず俺が先陣切るぜ! こっちまでおびき寄せるから上手くやれよな』
『よし、ではスイはアレが低空飛行になった所で翼を撃つのだ、出来るな?』
『前にフェルおじちゃんから教わったもん、出来るよー』
『うむ。ハナはそうだな、先程スイから水魔法のコツを教わったであろう。早速それを試すが良い』
『……。わ、わかりました……翼を撃ち抜ける威力はまだ期待出来ないので、えっと、眼を狙いますね』
『ほう、たとえ眼を潰せずとも視覚は奪えると。まあ良かろう、及第点だ。今後の課題はわかるな?』
『はい、出力と威力と共に上げられるよう努力します!! ……向田さん、ごめんなさい……』

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 ……ホントにとんでもないもん獲って帰ってきた件について。
『……解体のためにドランの街に戻らなくちゃいけないのかな、とか、またアイテムボックスの肥やしが増えるちゃう、とか一瞬思ったんですが……その……わ、私も狩りたくなってしまって……』
「そっかあ……狩りたくなっちゃったかあ……」
 申し訳なさそうに経緯を説明するハナちゃんの手前、俺は赤黒い巨体もとい赤竜レッドドラゴンを見せられてもなんとか大声を出さずにグッと堪えたのだった。
 帰ったら皆に詳しく話を聞くとして、まずは門が閉まる前に街に戻ります……。

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